小林 賢造(こばやし けんぞう)
富士通株式会社
日本データセンター協会(JDCC) 環境基準ワーキンググループ リーダー
一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA) データセンター省エネ専門委員会 委員長
日本データセンター業界のキーマンの方々に「若手への思い」を語っていただくブログリレーです。
8回目は富士通株式会社 小林様に伺いました。
– 最初に小林様がデータセンターに携わるきっかけをお聞かせいただけますでしょうか。
もともとは通信装置、NW装置の開発に携わっており、その中でも画像を送ったりするTV会議や画像を解析するセキュリティ技術などを専門としていた。その後、富士通がデータセンターを構築する際に、競争力向上のためにセキュリティなどの社内コンサルをするようになったのがきっかけとなった。その時にセキュリティや高信頼設備とともに今後は省エネが重要になることを感じたため、社内外の省エネ技術を検討・研究を始めた。今は、省エネ技術の向上を中心にデータセンター業界と関わっている。
– データセンターを運用する上で重要なキーワードとなる省エネですが、進めていく上でどのような苦労がありましたか。
昔からある基準の中には今では厳し過ぎるものがある。現在のIT機器はそれほど脆弱ではないため、今のデータセンターに求められる基準を今のIT技術に沿った形にリメイクする必要がある。また、そもそも必要な基準なのかということも考える必要がある。もともと何でその基準が出来たのかも、時間が経つと分からなくなっていることもある。
– 過去の基準を現在に適合させるという難しい課題ですが、実際に進めてみてどのように感じましたが。
どうしようと考えた時に、一般的に安全サイドに考えてしまったことにより、厳しいままになってしまうことが多々ある。固まってしまっている常識を変えるのは難しい。企業の中でやるよりも、業界団体を使ってやるほうがいいと考えているが、JDCC、JEITAなどの協会でもIT屋と設備屋の間で認識のすり合わせはまだまだ不十分で、うまく連携が取れているとは言い難い。たとえば、サーバーの運用温度にしても設備側では昔から決められた通りに冷却していても、実は最近のIT側はそこまで求めていなかったりもする。設備屋は言いつけをちゃんと守る文化だが、それに構わずIT屋は競って変わっていく文化という印象がある。もともとの文化が違うので、全体最適をするためにも、もっと会話をして互いのつながりを強める必要がある。
– 海外のデータセンター事業者が日本に参入してきていますが、日本のデータセンターは今後どうすべきでしょうか。
メガクラウドベンダーのデータセンターは参考すべきところはある。海外の動向も活発に変わってきているので把握することが大切。ただ、データセンターには地の利を活かした競争力形成といった要素も大きい。日本の電力事情や、気候などの地理的特性の中に,国際競争力として活かせるものがまだ眠っている。このドメスティックな特性を活かす技術やサービスの開発を日本のデータセンター事業者が引っ張っていくべきだと考える。今は活かせておらず、規模のパワーで海外のデータセンター事業者に押し切られている感がある。
– 規模での勝負になると、海外のデータセンター事業者には敵わないですが日本のデータセンター事業者が活路を見出すことは可能でしょうか。
メガクラウドベンダーは意思決定がシンプルで、自身で機器の設計、製作が可能でコストを抑えることが可能となっている。一方、日本では個々のデータセンター事業者は海外と比較すると小さいので、単独で対応することは難しいが、根幹となる共通的な基準を作っていけば、異なるデータセンター事業者が共通のシンプルな意思決定で動くことが可能になり、そこで全体最適が進み、複数のデータセンター事業者が恩恵を享受できる。基準はあくまでも必要最小な部分のみとすれば標準化は有効だと考えている。
– 個でなく集団として行動することにより他にも様々なメリットがあると思いますが、それを実現するために何が弊害となっているのでしょうか。
データセンターの効率化は各社で隠して争う必要はなく、全体で良くなっていけばいい。競うところはサービスでいいのではないかと考えている。データセンターの新しい技術の検証は時間がかかる。技術導入し、検証して、その反省を踏まえて再構築するのは数年後になってしまう。しかし、複数のアプローチをお互いに見ながら、どれが良かったかを取捨していければ技術の成熟は格段に早くなる。この取り組みは、大きい事業者単独ではできないこともある。このような動きは、今はまだできていない。全てを秘匿するのではなく、オープンにする事、クローズにする事の判断スキルが日本人は不足している。話をしやすい緩いコネクションを持つことが大事。
– 今の若手が「不足していること」があれば教えてください。
今のデータセンター業界で良くしゃべる人はたいていがおじさん。もっと若い人でしゃべる人が増えてもいいと思う。まだまだ、存在感がない。提言、リクエストを発信してほしい。
– 最後に若手に対して「期待していること」を教えてください。
上の人は考え方が凝り固まってしまって柔軟な発想ができない。これは宿命。若い方にしか思いつかないアイデアが出てくるはず。これを大切にしたい。そのためにも感受性を高めて、もっといろいろな情報を拾って、データセンター業界の人ともっとしゃべって(議論して)いってほしい。Future Centerの活動を通して実感していると思うが、データセンター業界は横のつながりが大切。
川口 晋(かわぐち すすむ)
株式会社NTTファシリティーズ データセンタービジネス本部 本部長
日本データセンター協会(JDCC) 理事
日本データセンター業界のキーマンの方々に「若手への思い」を語っていただくブログリレーです。
7回目は株式会社NTTファシリティーズ 川口様に伺いました。
– DC業界のキーマンの方々にインタビューさせていただいております。最初に川口様ご自身が建築の道に進まれたきっかけを教えてください。
大学受験の時には、理系ということ以外特に進路を決めていなかった。それで大学ごとに異なる学科を選んで受験した。早稲田大学の建築学科にはデッサンの試験があって、それなりに絵が描けるつもりでいたので早稲田は建築を受けてみることにした。それが建築に進んだきっかけ。
– 早稲田大学建築学科卒業後、NTTを就職先に選ばれた動機を教えてください。
学生時代は物理や力学が好きで、建築学科の中で専門を選ぶ際に構造を専攻した。大学4年生の頃にチェルノブイリ原発事故が起きたのだが、私の卒業論文のテーマが「原子炉と地盤の相互解析」だったため、原子力発電の問題に人一倍関心を持つようになった。同じ研究室の同期らとこの問題について議論を交わすうち、将来に禍根を残す原子力発電には反対する思いを固めた。そのため、就職先には原発を扱わない会社を選ぼうと考え、通信会社であるNTTに就職した。日本の情報通信インフラを支える会社で、自分の専門の構造が活かせると思ったことも動機だった。
– ちょうどバブル崩壊時期に入社されたのですが、心境の変化はあったのでしょうか。
学生目線としては、バブルというのは直接感じてはいなかった。入社してしばらくは仕事を覚えることの方が忙しく、バブルを意識することもなかった。そのうち、報道や経済評論でバブル崩壊が語られるようになり、客観的に「ああ弾けたんだな」、という程度の印象しかなかった。
–NTTで、データセンターに関わり始めたきっかけを教えてください。
1990年に入社して12年間NTTで構造設計していたが、当時は社外の委員会活動も積極的にやっていた。建築鉄骨溶接技能者のAW検定協議会の検定委員を務め、また、日本免震構造協会では免震技術を広めるために資格試験を作り、その指導講師などもしていた。その頃の自分は、構造設計の道を行くものだとばかり思っていた。ところが、2002年に会社が北京に駐在員事務所を開設することになり、ある日突然私が所長として赴任するよう命ぜられた。青天の霹靂だった。赴任後、中国で何がビジネスになるかをさまざま検討していた時に、中国の銀行から電算センターを作るためのコンサルティングの要請があり、これを受けたのが始まりだった。当時の中国はまだデータセンターに関する知見が乏しかったので、日本で実績を積んでいる当社の設計ノウハウが求められた。また、NTTコミュニケーションズが中国の通信キャリアと合併会社を持っていたので、NTTファシリティーズが設備の、NTTコミュニケーションズが運用のコンサルティングをそれぞれ担当する形で両社が連携して、中国の通信キャリアのデータセンター構築コンサルを実施するようになった。結局、2008年までの6年間北京に駐在したが、中国企業からの引き合いが最も多かったのがデータセンター関連の仕事だった。
– 1990年から2002年まではデータセンターと関わりは無かったのでしょうか。
その間、NTTグループの中ではドコモが分社化し、その通信用ノードビルの建設が目白押しだったので、こうした案件の構造設計には多く関わっていたが、いわゆるデータセンターを設計したことはなかった。
– データセンターと関わる前と後のギャップはございましたか。
特になかった。入社以来、通信ビルに関わってきたおかげで、ギャップは感じなかった。情報通信インフラとしてのデータセンターに携わることは、入社動機にも合致しており、何の違和感もなかった。
– 中国と日本との働き方の違いを教えてください。
多くある。まず、島国と大陸の文化が根本的に異なっている。日本のように国土の狭い島国では、隣の人と肘がぶつからないように気を配り合う「和」の文化が育まれる。一方、中国のように広大な土地を生き抜かなければならない大陸では、周りよりも自分を第一に考えるようになる。だからこそ中国では、自分に直接つながる血縁や身内にを大切にする意識が強い。ビジネス上の関係でも、本当に信じられる人を見極めてから、共に仕事をするというような面がある。また、中国企業では、経営者も含めて日本企業より若い世代がリーダーを務めていることが多く、意思決定のスピードがとにかく早い。
– データセンターでも言えることでしょうか。
まさに言える。当時彼らには知見やノウハウがなかったが、海外の企業からそれらを日々貪欲に吸収し、今では日本を追い抜いたような案件を実現している。ITの普及で言えば、田舎の八百屋でもキャベツ1個を買うためにスマホで電子決済するようになっている。そういった面では日本ではまだ普及率が低い。人口が日本の10倍以上いる国で、さまざまな分野でIT化が急速に進められているので、日本が追い抜かれるのは当たり前だったと今では思う。またICT機器などの標準化スピードも早く、データセンターも日本の数倍以上の数を建てている。そして、いち早くアグレッシブにサービスを作る。日本より強いマインドを感じさせる若手に接する機会が数多くあった。
– TVや記事などのメディアを見ると、中国は国そのものが情報操作しているイメージはあります。ナショナルセキュリティ的にも当時国からの圧力とかはあったのでしょうか。
当社が行なっていた事業は、あくまでデータセンターのファシリティに関する構築コンサルティングだったので、彼らからしたらむしろウェルカムだった。ノウハウを吸収したいフェーズだったので、そういったことは全く無かった。彼らとして、当時の目的を達成したからこその現在があるのだと思う。
– 中国以外にも目を向けてみたいと思います。Amazon、Googleなどのメガクラウドを含めて、日本データセンター業界はどのように変化するのでしょうか。
矛盾して聞こえるかもしれないが、2つの視点がある。1つの流れは「コモディティ化」や「オープン化」。データセンターそのものが特別なものでなくなり、誰でも同じ品質のものを構築・運用できるようになること。かつて日本電信電話公社の民営化と同時に、通信の自由化が実施され、それ以降通信キャリア各社でさまざまな通信サービスが作られてきた。繋ぐだけの事業領域だったものに、各キャリアがサービスとして付加価値を付けてきた。現在、データセンターも当たり前の社会インフラとなり、グローバルに見れば「コモディティ化」と「オープン化」が進んでいる。そのような状況だからこそ、2つ目の観点が必要になる。それが、サービスの多様化だ。デジタルトランスフォーメンションが進展する社会で、そのサービスの需要に合わせてデータセンターは差別化していける。実際にサービスを社会に提供するのはデータセンターのユーザーなので、データセンターはユーザーごとに最適な環境を提供することで付加価値を出すことが重要になってくる。
– 設備に関しては、メーカーの対応はまだブラックボックスの部分が残ります。海外のOCPなどのオープン化の流れに対して、日本のメーカーは海外に追いつけなくなるのではないでしょうか。
データセンター事業者は、自社のサービスのために設備を選び構築している。メーカーも、サービスの変化やユーザーの要求に応えずに、既得権を守っているばかりでは、競争力を失うだろう。ファシリティ領域はITに比べて、まだまだ変化が少ない。空調はラック当たりの発熱量に合わせた変化を迫られてきたが、電源については容量が増えるにつれてフットプリントも増やすような対応に留まっており、こうした点に着目した商品開発も競争力向上につながるだろう。
– トレンドとして、今後は水冷空調が主流になるのでしょうか?
データセンターが提供するサービスで、空調方式は選ばれるようになる。サービスが必要とするサーバ機器の発熱密度がラック4〜6kVAの電力容量であれば、今までのパッケージエアコンも合理的な選択肢だし、実際にそれで間に合う用途はなくならないだろう。一方、今後はGPUサーバなどこれまで以上に大きな演算能力を必要とするサービスが増えていくことも確かで、水冷空調だけでは間に合わないラック30kVA程度の発熱に対して、液冷やリアドアといった冷却方式を採用する必要も出てくる。
– では今後サーバからの発熱量の増加によって、液冷は普及されると考えて良いでしょうか。
液冷が特別な技術でなくなる方向には進むと思う。ただ、それが面的に普及するかといえば、一概に言えない。繰り返しになるが、冷却方式はデータセンターが提供するサービスで決まるので、その動向次第ということになると思う。
– 日本でも今後データセンターの建築ラッシュが始まるのでしょうか。
デジタルトランスフォーメーション時代を支える社会インフラとして、その需要はますます高まっているが、受電容量も含めた建設用地が潤沢にはないのが現状。一方で、データセンターは投資対象として儲かる、と考え始めている投資家が増えている。データセンターは土地に対しての投資額が大きい分、採算性も高い。投資家や不動産関係者がデータセンターのことを勉強し始めているので、その方面からの動きも今後出てくるだろう。
– データセンターの人材面について質問させてください。データセンターの現場には、ご年配の方と若手と両極端な世代に分かれることがあります。バックボーンが違う人たちをマネジメントする際に意識していることはございますか。
強く意識することはない。そもそも組織にはミッション・使命がある。それをマネージメント層が共有し、みんながそのミッション・使命に対して、何ができるのかを一緒に考える場を作る。こうしなきゃいけないということを統一するのではなく、何のためにやるかを共有してみんなが同じ方向を向くようになることが大事。
– データセンター業界は若手が少なく、保守的な考え方を持つ人が多いように思っています。
若手の皆さんは自分の「強み」、自信となるものを早い段階で持つべきだ。とにかく何でもいいので、これなら負けないぞ!というものを一つ持つこと。その「強み」は会社の業務だけではなく、データセンター業界でも発揮できるように引き上げていく。終身雇用が当たり前の社会ではなくなっていくので、皆さんがステップアップしていくためにも、何を自分の「強み」にするのか考えてほしい。
– 「強み」は若手への足りないことでもあるのでしょうか。
若手だから足りない、ということではない。年配の人に接しても、経験を「強み」として蓄えてきている人と、そうでもない人との差を感じるはずだ。若手のみなさんにも「強み」を身につける意識を持ってほしい。
– それは業界の若手のみなさんへの期待していることでもあるのでしょうか。
その通り。混沌としたこの世界でみなさん自身がハッピーになるために、活き活きと働いてほしいと考えている。業界で働く若手のみなさんがハッピーでないと、業界が暗くなってしまう。
– 川口さん自身が幸せになるために心がけていることはございますか。
大きな意味で、情報通信社会のインフラを支えるというNTT入社当時からのイメージ通りの仕事をやれている。目の前にあることにしっかり取り組んで結果を出すということの積み重ねがやりがいであるし、それがハッピーだと思う。
– 川口さん自身が若手の時はいかがでしたか。
入社3年目、子会社のシステム技術部に出向して、当時大型電算機センターで動いていた構造解析プログラムをワークステーションに移植して併せてGUIを一から作るという仕事を任されることになった。それを要件定義からシステム設計、コーディング、マニュアル作成に至るまで、外部に委託することなく全て自分でやり遂げて納品したことが大きな自信につながった。その自信が、それ以降に担当した別の難しい仕事や前例のない仕事に取り組む際の原動力になったのは間違いがないと思う。
– 最後にデータセンター業界に働く若手へのメッセージをください。
自由にやりたいようにやればいい。フューチャーセンターのような活動に参加し、自分ができること、やれることの幅を広げたほうが絶対に楽しくなる。そして貪欲に吸収して「強み」を見つけていくことで、視野も広くなって更に次のステージで活躍できるようになっていく。これはデータセンター業界だけではなく、どこでも言えること。今も昔も世の中は常に変化している。アンテナを高くして自発的にいろいろ動いた先にチャンスは待ってくれているものだと思う。
・テキスト
さくらインターネット株式会社 高峯 誠
・インタビュアー
三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社 相澤 祐太、株式会社NTTファシリティーズ 狭間 俊朗
尾西 弘之(おにし ひろゆき)
NTTコムウェア株式会社 ネットワーククラウド事業本部 SmartCloud推進部門 部門長
日本データセンター協会(JDCC) サーバ室技術ガイドブック ワーキンググループ リーダー
日本データセンター業界のキーマンの方々に「若手への思い」を語っていただくブログリレーです。
6回目はNTTコムウェア株式会社 尾西様に伺いました。
– 早速ですが、日本のデータセンター業界の変化はどのようにお考えでしょうか。
業界の成長とともにデータセンターの規模は大きくなってきましたが、5年前ごろから大きくならなくなりました。当時からモジュール化が流行り、小規模の投資に変わってきたと思います。しかしながら、今後はハイパースケールのデータセンターが出てきたときに、国内でも非常に大きな規模のデータセンターが増える傾向にあると思います。次に、電力密度の観点として一般用とハイスペックのデータセンターが2つに分かれてきています。一般的には4kVA 〜6kVAで充分ですが、10kVAを超過した需要が出てきました。また、ラック1台の耐荷重も1.2 〜1.3トンが限界だと考えられていましたが、液冷対応の配管設備も必要となってきており、耐荷重1.5トン程度が現れてきて、業界とともに技術も変化は起きています。
– データセンター市場の変化はいかがでしょうか。
国内市場は間違いなく伸びており、今までの都市型と郊外型の考えや用途が変わってきていると思います。ラック単位で売ってきましたが、占有面積や電力従量課金による販売が大規模都市を中心に行われてくるかもしれません。そして、これからは地方でもエッジコンピューティングで処理する傾向が出てくると予想しています。
– 国内と外資系データセンターとの事情を教えていただけますでしょうか。
外資系のデータセンターが参入しており、その流れに逆らえないと考えています。では日本の事業者はどうするのか。まずクラウドファーストからクラウドノーマルの時代になってきたため、ハウジング需要は落ちてきて、外資系データセンター事業者などのホールセラーが伸びており、元々大規模に運営している事業者は問題ないかもしれませんが、それ以外のデータセンターは生き残れるか懸念しています。そのため営業のやり方、サービス提供のやり方を見直す時期に来ていると思います。また、AmazonやGoogle、Microsoftなどのクラウド事業者との接続も重要となるでしょう。
– そのまま海外に飲み込まれるかもしれない日本はどのように立ち向かい、ビジネス展開すればよろしいでしょうか。
ハウジングの需要が減っていくのであれば、ハウジング以外で戦うことも一つの選択と考えています。クラウドの下にエッジコンピューティングやフォグコンピューティングがあり、IoTはフォグで集めて、エッジでローカル処理を行えます。これまでのデータセンターの用途とは異なってくるでしょう。SoRとSoEとの関係でも、情報系システムは間接費ベースの用途(ERPシステムなど)や企業内生産を行うための管理機能でした。情報系システムが持つ情報データが価値を生む、というビジネスに今後変わっていった時にエッジコンピューティングの傾向とどうマッピングするかが重要と思います。
– 別の視点でご質問させてください。尾西様がご参加されているOCPではオープン化の流れが加速しています。ただし、ファシリティ設備はベンダーロックインが残る現状はどうお考えでしょうか。
ベンダーロックインとしてはデータセンター建設時に、設計企業などが扱いやすい業者を選んでいる傾向があるかもしれません。外資系の事業者は標準化された物を選んで、地域エリアごとに微調整しながら導入しているため、国内のファシリティメーカーは相当苦労するのではないでしょうか。お客様が安心するためにファシリティの見える化、最適化も必要と思います。現状ファシリティはクローズドネットワーク前提でのシステムのため、オープン化しづらい状況がありますが、海外は最初からオープン設計している違いがあると考えています。
– 他に日本が遅れているものはありますか?
アセットマネージメント、OCPが取り組んでいるIT機器のオープン化も遅れていると思います。
– 例えばGoogleはサーバからファシリティまで自分たちで設計・保守していると聞いています。日本の事業者とはスピード感は違うと感じています。
IT機器の装置だけではなく、中のチップまでも自社独自で設計しています。グローバルで数十箇所以上のスケールを持つ事業者では成り立つのですが、国内事業者の規模では経営が持たないかもしれません。GoogleなどもメンバーであるOCPではその独自技術が誰でも手に入ることが一つの目標です。
– 実際アメリカでのOCP浸透率は違いますか。
実は、OCP自体はアメリカ内でもそこまで広がっていないようです。クラウドやゲームのコンテンツ等で大量のサーバを使う人たちには広まっています。技術自体がどんどん派生や進化しているのですが、日本についてはリードオンリー、勉強しているだけの会社が多いようにも思えます。
– 日本企業のサーバメーカーは追随できていないのでしょうか?
日本においては自社設計されなくなり、技術の動向を捕まえられておらず、コントロールがしづらいようです。そのためOCPの戦場には入れていません。彼らも技術オープン化の必要性は理解していますが、企業内でファシリティ部門なのかIT部門なのか、どちらが責任を負うのか、またその間に垣根があります。そして今はオープン化ができていないことと、そして人海戦術でやっているからコストが非常にかかっているように見えます。
– 日本の事業者に必要な視点はございますでしょうか。
『さくらインターネット田中社長』の【余白】を作ることが大事というメッセージです。私も運用者、技術者にはとても必要なことだと感じています。あと【端折ること】も必要だと思っています。業務には色々なプロセスがありますが、一つ抜いてみること。端折ってみたことによって本当に必要だったものも分かると思います。
– ありがとうございます。続いては尾西様のことを伺わせてください。データセンターに関わるきっかけを教えてください。
電電公社に入社し、電気通信ネットワーク関連の運用、開発などをやっていました。入社当時、電話局で通信機械・電力を担当し、電力設備、空調などを運用しており、データセンター関連では大変役に立っていると思います。NTTコムウェアが20年前に設立され、当初はNTTグループ向けにシステムの開発、導入、保守をしていたのですが、その後に対象範囲をNTTグループ以外の他企業向けにも拡げました。そして、それまでの通信機械室でのシステム運用の延長で、データセンターのビジネスも関わり始めたことがきっかけです。
– いまの若手はデータセンターを知らない状態で入社しています。技術情報をオープンで交換できるコミュニティが欲しい、そして若手のメンバーがもっと欲しい、という声が多いです。尾西様自身の若手時代はどういった思いで働いていたのでしょうか。
私自身が機械室で働いていた時期もあり、保守運用の責任者を担当したことから、如何にお客様のシステムを守るのかについては強い思いがあります。このためにはベストプラクティスを共有することは重要です。ただ、運用業務として技能的なこと、例えば目視点検ばかりやらせるだけだと腐ってしまいます。彼らも技術者としてのプライドがあるはずなので、新しい技術動向を見せながら、いろいろな業務に携わってきてもらうようにしてきました。
– 新しい技術を見せる手法・やり方をご教示いただけますでしょうか。
最初にNTTコムウェア社内で他社事例を習得するために、国内外のデータセンター見学を行いました。その後NTTグループ会社に拡げ、さらにグループに関係なく他社含めてサバイバルツアーを開催したことにより、新しいデータセンターの技術、運用情報を勉強しています。自分に任された任務だけではなく、他社と会話することで情報交換の活発化が私の根本にあります。サーバ室技術ガイドブックのワーキンググループもそこが目的です。各社が悩みを抱えている決まりがないものをまずは目に見えて分かる形にする。データセンター運用者の視点だけではなく、上からの視点、下からの視点も見ることが重要だと思います。自分の立場だけではなく、関係するステークホルダーも視点も捉えながら、勉強して行くことをお勧めします。
– 若手たちは情報を出してはいけない、と思っているようです。データセンター自体がセキュアな場所であるため、語ること自体もブレーキしているように見えます。
案外吐き出して見ると、みんな同じ悩みを抱えていることが分かります。データセンターの技術において秘密なことは案外少ないと思っています。それらの情報を皆さんが吐き出すことでオープンコミュニティがレベルアップし、自分に戻ってきます。ただしお客様情報などの一定の制限はかけておく約束事しておきながら、喋れることは喋っていいはずだと思います。
– 若手へのメッセージをいただきたいです。尾西様から見て若手への足りないことを教えてください。
足りないのは「チャレンジ」、「挑戦」です。与えられた仕事をこなすことはみなさん精一杯、誠実にやっています。ただし改善すること、新しいことをできないことが気になっています。私からデータセンター運用者向けに伝えていることは「地道な努力」と「大胆な発想」(エボリューション&レボリューション)です。お客様のシステムを守る上で地道にやっていくことは必要であり、大胆な発想を持ってコストを安くする、エンジニアを楽にして次のステージに目指すことが大事と思います。「地道な」ことはみなさんやられていますが、「大胆な」ことは難しいようです。手順にあることだけ従っていれば「大胆な」ことは出来なくなるでしょう。そして人の言われたことだけをやっているのはつまらないはずです。例えば、「セレンディピディ」を意識してみてください。苦労をすること、経験することで結果につながります。若手の時は着実にやっていると、いつの間にか力になるはずです。データセンターで運用管理で楽になること(端折ること)も段々に分かってくると思います。将来チームリーダーやマネージャ、スーパーバイザーになった時にコストや人のマネジメントをどうするかも見えてきます。
– 最後に、若手に対して期待していることをお話しいただけますでしょうか。
外資系の参入などで厳しい状況になってくるので、若い人の柔軟な発想が出てくることを期待しています。過去の経験だけしゃべる人間ではなく、フリーな立場でいろんなことを喋って欲しいです。私はそういうことを期待しています。自分の成長と会社、そして社会が良くならないと自分の生活も成り立たないからです。若手の皆さんから、今までと違うことを指摘できるようになると、より良い業界になってくると信じています。
・インタビュアー、テキスト
さくらインターネット株式会社 高峯 誠
・インタビュアー
三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社 相澤 祐太
フューチャーセンター 9回目をブロードバンドタワー様の本社にて開催いたしました。
2018年5月18日(金) 17:00 〜
ブロードバンドタワー様 本社
14名
・オープニング FutureCenter概要
・各チームからの活動成果発表
・ライトニングトーク
・FutureCenter2.0に向けて
今回はセッション初参加者が2名いらっしゃったので、私ディレクター 高峯より FutureCener の概要を改めてお話ししました。また、活動名称を【Creation(創造)】ではなく、【Co-Creation(協創)】に変更したことを共有しました。
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3名のメンバーが立候補し、データセンターに関わるライトニングトークをいただきました。
トークテーマは以下の通りです。
(※)申し訳ないのですが、ライトニングトークの内容は非公開といたします。
No | トークテーマ | トークメンバー |
---|---|---|
1 | ファイバーケーブルの外的ダメージ見える化 | ブロードバンドタワー 大塚さん |
2 | 様々なDC運用トラブル | ヤフー 秋山さん |
3 | 海外DC事業者とのシナジーについて | NTTCommunications 大山さん |
「FutureCenter2.0」と題して、2018年10月より進化したFutureCenterを目指して活動を開始します。
その内容については、現在取り組んでいる【Co-Creation】のアウトプット後に本ページに掲載する予定です。
FutureCenterは今後も次世代たちの知の協創=【Co-Creation】を続けていきます。
ご興味のある方は、お気軽に本ホームページ上部の「Contact」画面から問い合わせください。
フューチャーセンターの8回目を、さくらインターネット 石狩DCにて2018年3月5日(月)に実施しました。
▼事前に各チームリーダーとmtgを実施して、今後の活動の方向性について協議
▼2018年9月までを活動の区切りとし、現在進行形の活動を実施。
▼以降はFutureCenter2.0として別途活動
▼広報チーム
▼ユーザ目線の改善チーム
▼新データセンター/新技術チーム
▼データセンターのない世界チーム
▼フューチャーペーパーチーム
年間のJDCC FutuerCenterの活動を振り返り、今一度“FutureCenterの価値構築”についてワールドカフェ形式でディスカッションを実施。
各チームの価値観を簡単にまとめていただきました。
突然ですが、データセンターって聞いてパッと何かイメージできますか??
、、、できないですよね。笑
恐らくIT業界以外の大半の方はデータセンターの存在自体知らないのではないでしょうか。
(私もこの業界に入る前は全く知りませんでした笑)
学生を含めた幅広い年代の方にデータセンターを知ってもらうにはどうすればいいか
考えた結果、データセンターがないことで世の中がどうなってしまうのか、をテーマに
データセンターの社会的役割を考えてみました。
それでは、データセンターが無いと私たちの生活はどうなってしまうのでしょう??
なんてもっての外。。。
上記はほんの一例です。
こんな感じで定期的に集まりデータセンターの重要性について意見を出し合っています!
いかがでしょうか、、、
データセンター、めっちゃ大事やん。
そうなんです!データセンターが無いと私たちの生活はとても不便になってしまうのです!!
データセンターが24時間365日ずっと動いているから私たちの日常は便利になるんですよ~
どうでしょう、データセンターの大事さがイメージできましたか??
といってもまだまだ具体的なイメージはつかないと思います。
そこで今後の活動予定として、「データセンターがない世界」をもっと分かりやすく
伝わりやすくすることでデータセンターの認知度アップを目指していきます!!
この記事を読んで少しでもデータセンターに興味を持っていただけたら、
フューチャーセンターの7回目を、さくらインターネット 新宿にて2017年10月27日(金)に実施しました。
▼広報チーム
▼ユーザ目線の改善チーム
▼新データセンター/新技術チーム
▼データセンターのない世界チーム
▼フューチャーペーパーチーム
ホンネ相関図
エクスカーション ※(外で)ex-(走る)cur-(すること)sion
市川 孝誠(いちかわ こうせい)
株式会社市川技術士事務所
日本データセンター協会(JDCC) ファシリティ・スタンダード ワーキンググループ リーダー
日本データセンター業界のキーマンの方々に「若手への思い」を語っていただくブログリレーです。
5回目は株式会社市川技術士事務所 市川様に伺いました。
– 最初に、日本のデータセンター業界はどのように変化していくか、市川様のお考えを聞かせてください。
データセンター市場は国内企業だけで閉じられるものではなくなっている。外資系企業の進出が加速しており、国内企業同士で競争している場合ではなく、国内のデータセンター事業者が手を取り合って、海外クラウド事業社と対抗していくことが大切。
– 海外と競争するためには何が必要になってくるでしょうか。
日本に進出している外資系のメガクラウドベンダーは規模が大きく、開発投資金額も桁違いに大きいことから日本のデータセンター事業者が、個々に対応できることは限られている。また、国内データセンター事業者は同じ課題を抱えていることも多々あるので、JDCCを活用して業界全体で対応することも必要と思われる。
– データセンター業界のオープン化については若手同士のディスカッションでも議論に挙がりました。若手だけでなくデータセンター業界全体としてのオープン化は課題の1つとして認識されているということでしょうか。
日本のデータセンター業界では情報を外に出さない傾向が強く、若手が業界内で会話をする機会が少ないように思われる。一方欧米では業界内を渡り歩く人も多く、事業者同士が情報交換を行いやすい傾向がある。昨年JDCCとして、サーバラック収納に適した短い長さのサーバ用電源ケーブルの採用をサーバメーカーに依頼し実現した例もある。個々の会社では折衝できないことも業界団体として要望すれば実現できることも多いため、このような取り組みをもっと進めていくことが必要と思う。
– データセンター業界全体のお話を最初に伺いましたが、ファシリティ・スタンダード ワーキンググループのリーダーを務める市川様には今のデータセンターファシリティはどのように見えるでしょうか。
日本のデータセンターファシリティは海外と比較しても全く遜色のないレベルと思う。ただ、日本と海外ではSLAの考え方や捉え方の違いがある。海外ではデータセンターの利用者も、SLAに規定されたダウンタイムは問題なく許容するのに対し、日本ではSLAを結ばず、ティアレベルに関係なくダウンタイムを許容しない利用者が多く、ダウンタイムが認められないことからデータセンターの運用に過度の負担が強いられている。
– メンテナンスにどのような違いがあるのでしょうか。
海外のデータセンター事業者は同じファシリティ仕様のデータセンターを作ることにより、運用やメンテナンスを標準化・統一化している例が多い。日本では新しく作るセンターには最新の技術を導入する傾向が強く、結果として各センターごとに異なる運用やメンテナンスが必要になってしまっている。どのセンターに行っても同じ仕様とすることにより、トラブル対応事例や改善事例が共有化され・人材の教育・育成も標準化・短期間化可能となるものと思われる。
– 大変おこがましいのですが、市川様がデータセンターと関わるようになった契機を教えてください。
鹿島建設株式会社に入社後、スタジオなどの設計をやっていたが2000年にデータセンターの案件に携わったのが契機。オフィスの電力使用量が100~150 VA/㎡の時代にデータセンターは1~1.5/㎡(2 kVA/ラック)が要求され、このような施設が本当にあるのか信じられなかった。
– データセンターがまだまだ少なかった時期だと思いますが、どのような苦労がありましたか。
そのころは外資系データセンターの建設ラッシュであり、毎週のように新しい案件が舞い込んでくる一方、従来の電算センターとデータセンターとでは基準が異なり、施主の要求も良く理解できなかった。このため、IEEE(アメリカ合衆国に本部を持つ電気工学・電子工学技術の学会)の原文を取り寄せ、バイブルとして読み漁った。また、英語での意思疎通もうまくできないことから、施主が何を期待してるか「忖度」するようになり、「設計図を書いて、建てて終わり」という考えから「人と人の付き合い」というように変わっていった。
– 最後に若手に対して「期待していること」を教えてください。
これからのデータセンター業界を変えていくのはあなたたち若手です。そのためには、他の会社の人と積極的に話しをすることが大事で、仕事だけではなく、無駄話をすることで本音を言えるようになる。その面ではフューチャーセンターは貴重な活動だと思うので、若手が主体となりもっと業界を盛り上げて欲しい。
・インタビュアー、テキスト
株式会社NTTファシリティーズ 狭間 俊朗
・インタビュアー
さくらインターネット株式会社 高峯 誠
増永 直大(ますなが なおひろ)
三菱総研DCS株式会社
日本データセンター協会(JDCC) 事務局長
日本データセンター業界のキーマンの方々に「若手への思い」を語っていただくブログリレーです。
4回目は三菱総研DCS株式会社 増永様に伺いました。
– 日本のデータセンター業界はどのように変化していくか、増永様のお考えを聞かせてください。
正直なところ、今後どのように変化していくか想像できないが、日本国内では新しいビジネススキームが必要になる可能性が高い。
– と言いますと、現状のビジネススキームのどの辺りが問題になってくるでしょうか。
国内企業はレガシーシステムに囚われてしまっているデータセンター事業者が多いと感じている。また、レガシーシステムで儲けようとしている企業が多いため、考え方が古い。データセンターはあくまでもインフラであり、そこから生まれるサービスが重要。日本のデータセンター事業者は「どのようなサービスを生み出せるか」に注力すべき。データセンターそのものが重要であるという概念に囚われている人が日本には多い。
– このような既成概念のビジネスが続いている理由をどうお考えでしょうか。
1990年代のバブル崩壊直後に新卒入社した人達が、今の企業の部長や課長等の役職を担っている。バブル崩壊後は景気悪化によるコスト削減を第一優先として働いてきた人が多く、いい意味でも悪い意味でも費用対効果ばかり気にする傾向があり、新しいことに挑戦する人が少なかった。その結果チャレンジ精神の風土が育たなくなった。これは、今の若手にも同じことが言えると思う。
– 一方、海外に目を向けると同じようなことは起こってないのでしょうか。
AmazonやGoogleに代表されるようなハイパークラウドと呼ばれる企業たちがレガシーシステムを壊し、破壊的イノベーターとなりゲームチェンジを起こしている。この流れに唯一追従しているのは、IT後発組のレガシーシステムがそもそもなく、制約やしがらみがない国。中国が代表的な例である。
– このようなゲームチェンジを可能としている要因はなにでしょうか。
ハイパークラウドのような企業は、自社製品で統一したり、自分たちのやりやすいようにファシリティ構築を行っているため、管理が容易。他社の倍くらいのスピード感でビジネスを行い、世界を席巻している。
– 大変おこがましいのですが、増永様が若手時代の話を伺わせてください。いまのデータセンターあるいはインターネットと関わるようになった契機を教えてください。
野村総合研究所に在籍していた時に、証券会社のオンラインシステムの運用を担当していた。その際に、紙の手順書をワークステーションに落とし込んで業務の自動化、ジョブの監視システム構築等、運用効率の改善に取り組んだ時にデータセンターを利用する側として関わるようになった。その後にデータセンター設立に参画するようになった。
– ユーザー側から構築側へと業務が変わりましたが、データセンター設立に参画した際にはどのような思いがありましたか。
チャレンジを歓迎される風土があり、6kVAラック専用のサーバ室構築、200Vのみを扱うサーバ室の構築等、様々な取り組みに挑戦した。ハウジング全盛期という後押しもあり、データセンターのオープン前に完売するほど人気があった。
– 設立当初から成功を収めたデータセンターですが、運用段階に入ってからはどのようなことを意識されていましたか。
現場は現場のことしか語らず、お客様は目の前の困ったことしか話さないため、本当に必要なもの、5〜10年後を見据えたサービス提案ができるように心がけていた。お客様のニーズを汲み取るだけでは、いずれ陳腐化してしまうという意識があった。
– 最後に若手に対して「期待していること」を教えてください。
デジタルネイティブ世代の価値観だからこそ、発想できる新しい取り組みにチャレンジしてほしい。ただし、チャレンジするには覚悟も持って取り組んでほしい。若い世代が考える10年後のデータセンターがどんなものなのか、期待している。
・インタビュアー、テキスト
株式会社NTTファシリティーズ 狭間 俊朗
・インタビュアー
さくらインターネット株式会社 高峯 誠、三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社 相澤 祐太
杉田 正 (すぎた ただし)
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
情報技術研究部門 テクニカルスタッフ
日本データセンター業界のキーマンの方々に「若手への思い」を語っていただくブログリレーです。
第3回目は産業技術総合研究所 杉田様に伺いました。
– 今後の日本のデータセンター業界はどのように変化していくと考えますか。
データセンターは今後も増えていくと考えるが、今の数では圧倒的に足りない。日本にはもっともっとデータセンターが必要だ。
– 増えていくという言葉を聞いて、業界で働く身としては期待を持てるのですが、足りないとは一体どのような状況でしょうか。
数字で考えると分かりやすい。日本はサーバが年間300万台稼働していると言われているが、半分以上はデータセンターに入っていない。さくらインターネットの石狩データセンターの規模でさえ最大3万台収容、残りの数百万台のサーバの受け皿となるデータセンターはあるのか?日本にはまだまだデータセンターが足りないよ、圧倒的に足りない。
– 足りない状況の中で、データセンター建設を後押しするには大手ゼネコンの力が不可欠かと思います。
今までは東京オリンピック関連の建設が多く、ゼネコンはデータセンター建設から手を引いていた。今はだいぶ落ち着いてきているという情報を入手しており、今後はデータセンターの建設ラッシュが加速するだろうと見込んでいる。
– 日本でこの勢いということは、海外のデータセンター業界の勢いも止まらないとみていいですか。
その通り。そして日本とは次元が違う。特に中国の勢いが凄まじい。アメリカのデータセンター数4,000センターに対し、中国は9,000センター稼働している。日本は600センター程度だから海外と比べたらまだまだ。さっき話した足りない理由が分かるでしょう。
– ものすごい差が生まれていますね。数でも違いがありますが、海外のデータセンターと日本のデータセンター技術者に違いはありますか。
基本的にオープン。特にOCPを推進する Facebookのデータセンター技術者は聞けばなんでもノウハウを教えてくれる。逆に日本はどうだろうか。皆情報を隠すことばかりに専念している。全ての情報を開示しろとは言わないが、データセンター業界全体のスキルアップを目指すのであれば、許容できる範囲でオープンになんでも議論すべき。
– ここからは杉田様の若手時代のお話をお伺いします。今ではデータセンターに関わる多種多様なプロジェクトでご活躍されていますが、新卒から若手の時はどのような仕事に従事していましたか。
新卒では電装システム系の設計・工事を担う会社に入社した。そこからはクボタ→コアマイクロシステムズ→ファーストサーバ等いろんな企業を転々として、今は産業技術総合研究所のテクニカルスタッフとして「省エネDC1本」で仕事している。若い頃の話じゃないけど、PUE=1.1以下の省電力を実現している倉敷や新宿のデータセンターは私がデザインしたよ。
– 1つの括りにとらわれず、様々な業種に従事していらっしゃいますね。
特に小学生の頃からラジオとか作るぐらい電気が好きで、電気と同じくらいコンピュータも好きだった。そのバックボーンがあるから色々な企業で仕事させてもらっているというのもある。特に新しいものが好きだから、自分で最新技術とか調べてひたすら徹底的に勉強していた。
– 最新技術という意味で、今後データセンター界隈で出て来る技術とかありますか。
電気代単価を7円くらいまで抑えることのできるペトロスロイカ(太陽光発電)やリチウムイオン電池の技術が今後5年以内に広く普及するだろう。電気代がネックになっているデータセンターにとってはまぎれもないチャンスだ。
– 若手に対して足りないと感じることを教えてください。
「英語を勉強すること」これに尽きる。ITにしてもデータセンターにしても最新技術は全て英語で発信されている。そして、海外にいけ!先ほどもFacebookのデータセンター技術者の話に触れたが、海外はやる気があればなんでも教えてくれる。実際に、とある企業で海外企業に若手を武者修行へ出したところ、そのギャップでそのまま海外企業に転職してしまった事例があるくらいだ。
– 逆に若手に期待していることを教えてください。
知見を広げて、世の中をたくさん見るべき。その時に重要なのは自分の立ち位置を考えて行動すること。若手であればその立ち位置であれば、いわゆるデータセンター業界でキーマンと呼ばれる人たちなら喜んでその知見を教えてくれると思う。何でも興味を持って、今後のデータセンター業界を盛り上げて。期待している。
・インタビュアー、テキスト
三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社 相澤 祐太
・インタビュアー
さくらインターネット株式会社 高峯 誠、株式会社NTTファシリティーズ 狭間 俊朗