市川技術士事務所 市川様に聞いてみた ブログリレー#5

市川技術士事務所 市川様に聞いてみた ブログリレー#5

Profile

市川 孝誠(いちかわ こうせい)

株式会社市川技術士事務所

日本データセンター協会(JDCC) ファシリティ・スタンダード ワーキンググループ リーダー

 

日本データセンター業界のキーマンの方々に「若手への思い」を語っていただくブログリレーです。

5回目は株式会社市川技術士事務所 市川様に伺いました。

 

◆ 世界と競える力を

–  最初に、日本のデータセンター業界はどのように変化していくか、市川様のお考えを聞かせてください。

データセンター市場は国内企業だけで閉じられるものではなくなっている。外資系企業の進出が加速しており、国内企業同士で競争している場合ではなく、国内のデータセンター事業者が手を取り合って、海外クラウド事業社と対抗していくことが大切。

 

– 海外と競争するためには何が必要になってくるでしょうか。

日本に進出している外資系のメガクラウドベンダーは規模が大きく、開発投資金額も桁違いに大きいことから日本のデータセンター事業者が、個々に対応できることは限られている。また、国内データセンター事業者は同じ課題を抱えていることも多々あるので、JDCCを活用して業界全体で対応することも必要と思われる。

 

– データセンター業界のオープン化については若手同士のディスカッションでも議論に挙がりました。若手だけでなくデータセンター業界全体としてのオープン化は課題の1つとして認識されているということでしょうか。

日本のデータセンター業界では情報を外に出さない傾向が強く、若手が業界内で会話をする機会が少ないように思われる。一方欧米では業界内を渡り歩く人も多く、事業者同士が情報交換を行いやすい傾向がある。昨年JDCCとして、サーバラック収納に適した短い長さのサーバ用電源ケーブルの採用をサーバメーカーに依頼し実現した例もある。個々の会社では折衝できないことも業界団体として要望すれば実現できることも多いため、このような取り組みをもっと進めていくことが必要と思う。

 

◆ 設備・運用の考え方は適切か?

– データセンター業界全体のお話を最初に伺いましたが、ファシリティ・スタンダード ワーキンググループのリーダーを務める市川様には今のデータセンターファシリティはどのように見えるでしょうか。

日本のデータセンターファシリティは海外と比較しても全く遜色のないレベルと思う。ただ、日本と海外ではSLAの考え方や捉え方の違いがある。海外ではデータセンターの利用者も、SLAに規定されたダウンタイムは問題なく許容するのに対し、日本ではSLAを結ばず、ティアレベルに関係なくダウンタイムを許容しない利用者が多く、ダウンタイムが認められないことからデータセンターの運用に過度の負担が強いられている。

 

– メンテナンスにどのような違いがあるのでしょうか。

海外のデータセンター事業者は同じファシリティ仕様のデータセンターを作ることにより、運用やメンテナンスを標準化・統一化している例が多い。日本では新しく作るセンターには最新の技術を導入する傾向が強く、結果として各センターごとに異なる運用やメンテナンスが必要になってしまっている。どのセンターに行っても同じ仕様とすることにより、トラブル対応事例や改善事例が共有化され・人材の教育・育成も標準化・短期間化可能となるものと思われる。

 

◆ 人との付き合いはいつでも大事

– 大変おこがましいのですが、市川様がデータセンターと関わるようになった契機を教えてください。

鹿島建設株式会社に入社後、スタジオなどの設計をやっていたが2000年にデータセンターの案件に携わったのが契機。オフィスの電力使用量が100~150 VA/㎡の時代にデータセンターは1~1.5/㎡(2 kVA/ラック)が要求され、このような施設が本当にあるのか信じられなかった。

 

– データセンターがまだまだ少なかった時期だと思いますが、どのような苦労がありましたか。

そのころは外資系データセンターの建設ラッシュであり、毎週のように新しい案件が舞い込んでくる一方、従来の電算センターとデータセンターとでは基準が異なり、施主の要求も良く理解できなかった。このため、IEEE(アメリカ合衆国に本部を持つ電気工学・電子工学技術の学会)の原文を取り寄せ、バイブルとして読み漁った。また、英語での意思疎通もうまくできないことから、施主が何を期待してるか「忖度」するようになり、「設計図を書いて、建てて終わり」という考えから「人と人の付き合い」というように変わっていった。

 

◆ あなたたちが変える

– 最後に若手に対して「期待していること」を教えてください。

これからのデータセンター業界を変えていくのはあなたたち若手です。そのためには、他の会社の人と積極的に話しをすることが大事で、仕事だけではなく、無駄話をすることで本音を言えるようになる。その面ではフューチャーセンターは貴重な活動だと思うので、若手が主体となりもっと業界を盛り上げて欲しい。

 

・インタビュアー、テキスト

株式会社NTTファシリティーズ 狭間 俊朗

・インタビュアー

さくらインターネット株式会社 高峯 誠

Director