増永 直大(ますなが なおひろ)
三菱総研DCS株式会社
日本データセンター協会(JDCC) 事務局長
日本データセンター業界のキーマンの方々に「若手への思い」を語っていただくブログリレーです。
4回目は三菱総研DCS株式会社 増永様に伺いました。
– 日本のデータセンター業界はどのように変化していくか、増永様のお考えを聞かせてください。
正直なところ、今後どのように変化していくか想像できないが、日本国内では新しいビジネススキームが必要になる可能性が高い。
– と言いますと、現状のビジネススキームのどの辺りが問題になってくるでしょうか。
国内企業はレガシーシステムに囚われてしまっているデータセンター事業者が多いと感じている。また、レガシーシステムで儲けようとしている企業が多いため、考え方が古い。データセンターはあくまでもインフラであり、そこから生まれるサービスが重要。日本のデータセンター事業者は「どのようなサービスを生み出せるか」に注力すべき。データセンターそのものが重要であるという概念に囚われている人が日本には多い。
– このような既成概念のビジネスが続いている理由をどうお考えでしょうか。
1990年代のバブル崩壊直後に新卒入社した人達が、今の企業の部長や課長等の役職を担っている。バブル崩壊後は景気悪化によるコスト削減を第一優先として働いてきた人が多く、いい意味でも悪い意味でも費用対効果ばかり気にする傾向があり、新しいことに挑戦する人が少なかった。その結果チャレンジ精神の風土が育たなくなった。これは、今の若手にも同じことが言えると思う。
– 一方、海外に目を向けると同じようなことは起こってないのでしょうか。
AmazonやGoogleに代表されるようなハイパークラウドと呼ばれる企業たちがレガシーシステムを壊し、破壊的イノベーターとなりゲームチェンジを起こしている。この流れに唯一追従しているのは、IT後発組のレガシーシステムがそもそもなく、制約やしがらみがない国。中国が代表的な例である。
– このようなゲームチェンジを可能としている要因はなにでしょうか。
ハイパークラウドのような企業は、自社製品で統一したり、自分たちのやりやすいようにファシリティ構築を行っているため、管理が容易。他社の倍くらいのスピード感でビジネスを行い、世界を席巻している。
– 大変おこがましいのですが、増永様が若手時代の話を伺わせてください。いまのデータセンターあるいはインターネットと関わるようになった契機を教えてください。
野村総合研究所に在籍していた時に、証券会社のオンラインシステムの運用を担当していた。その際に、紙の手順書をワークステーションに落とし込んで業務の自動化、ジョブの監視システム構築等、運用効率の改善に取り組んだ時にデータセンターを利用する側として関わるようになった。その後にデータセンター設立に参画するようになった。
– ユーザー側から構築側へと業務が変わりましたが、データセンター設立に参画した際にはどのような思いがありましたか。
チャレンジを歓迎される風土があり、6kVAラック専用のサーバ室構築、200Vのみを扱うサーバ室の構築等、様々な取り組みに挑戦した。ハウジング全盛期という後押しもあり、データセンターのオープン前に完売するほど人気があった。
– 設立当初から成功を収めたデータセンターですが、運用段階に入ってからはどのようなことを意識されていましたか。
現場は現場のことしか語らず、お客様は目の前の困ったことしか話さないため、本当に必要なもの、5〜10年後を見据えたサービス提案ができるように心がけていた。お客様のニーズを汲み取るだけでは、いずれ陳腐化してしまうという意識があった。
– 最後に若手に対して「期待していること」を教えてください。
デジタルネイティブ世代の価値観だからこそ、発想できる新しい取り組みにチャレンジしてほしい。ただし、チャレンジするには覚悟も持って取り組んでほしい。若い世代が考える10年後のデータセンターがどんなものなのか、期待している。
・インタビュアー、テキスト
株式会社NTTファシリティーズ 狭間 俊朗
・インタビュアー
さくらインターネット株式会社 高峯 誠、三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社 相澤 祐太