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富士通 小林様に聞いてみた ブログリレー#8

Profile

小林 賢造(こばやし けんぞう)

富士通株式会社

日本データセンター協会(JDCC) 環境基準ワーキンググループ リーダー

一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA) データセンター省エネ専門委員会 委員長

日本データセンター業界のキーマンの方々に「若手への思い」を語っていただくブログリレーです。

8回目は富士通株式会社 小林様に伺いました。

 

その基準は本当に正しいのか

–  最初に小林様がデータセンターに携わるきっかけをお聞かせいただけますでしょうか。

もともとは通信装置、NW装置の開発に携わっており、その中でも画像を送ったりするTV会議や画像を解析するセキュリティ技術などを専門としていた。その後、富士通がデータセンターを構築する際に、競争力向上のためにセキュリティなどの社内コンサルをするようになったのがきっかけとなった。その時にセキュリティや高信頼設備とともに今後は省エネが重要になることを感じたため、社内外の省エネ技術を検討・研究を始めた。今は、省エネ技術の向上を中心にデータセンター業界と関わっている。

 

– データセンターを運用する上で重要なキーワードとなる省エネですが、進めていく上でどのような苦労がありましたか。

昔からある基準の中には今では厳し過ぎるものがある。現在のIT機器はそれほど脆弱ではないため、今のデータセンターに求められる基準を今のIT技術に沿った形にリメイクする必要がある。また、そもそも必要な基準なのかということも考える必要がある。もともと何でその基準が出来たのかも、時間が経つと分からなくなっていることもある。

 

– 過去の基準を現在に適合させるという難しい課題ですが、実際に進めてみてどのように感じましたが。

どうしようと考えた時に、一般的に安全サイドに考えてしまったことにより、厳しいままになってしまうことが多々ある。固まってしまっている常識を変えるのは難しい。企業の中でやるよりも、業界団体を使ってやるほうがいいと考えているが、JDCC、JEITAなどの協会でもIT屋と設備屋の間で認識のすり合わせはまだまだ不十分で、うまく連携が取れているとは言い難い。たとえば、サーバーの運用温度にしても設備側では昔から決められた通りに冷却していても、実は最近のIT側はそこまで求めていなかったりもする。設備屋は言いつけをちゃんと守る文化だが、それに構わずIT屋は競って変わっていく文化という印象がある。もともとの文化が違うので、全体最適をするためにも、もっと会話をして互いのつながりを強める必要がある。

 

データセンター事業者はもっと協力すべき

– 海外のデータセンター事業者が日本に参入してきていますが、日本のデータセンターは今後どうすべきでしょうか。

メガクラウドベンダーのデータセンターは参考すべきところはある。海外の動向も活発に変わってきているので把握することが大切。ただ、データセンターには地の利を活かした競争力形成といった要素も大きい。日本の電力事情や、気候などの地理的特性の中に,国際競争力として活かせるものがまだ眠っている。このドメスティックな特性を活かす技術やサービスの開発を日本のデータセンター事業者が引っ張っていくべきだと考える。今は活かせておらず、規模のパワーで海外のデータセンター事業者に押し切られている感がある。

 

– 規模での勝負になると、海外のデータセンター事業者には敵わないですが日本のデータセンター事業者が活路を見出すことは可能でしょうか。

メガクラウドベンダーは意思決定がシンプルで、自身で機器の設計、製作が可能でコストを抑えることが可能となっている。一方、日本では個々のデータセンター事業者は海外と比較すると小さいので、単独で対応することは難しいが、根幹となる共通的な基準を作っていけば、異なるデータセンター事業者が共通のシンプルな意思決定で動くことが可能になり、そこで全体最適が進み、複数のデータセンター事業者が恩恵を享受できる。基準はあくまでも必要最小な部分のみとすれば標準化は有効だと考えている。

 

– 個でなく集団として行動することにより他にも様々なメリットがあると思いますが、それを実現するために何が弊害となっているのでしょうか。

データセンターの効率化は各社で隠して争う必要はなく、全体で良くなっていけばいい。競うところはサービスでいいのではないかと考えている。データセンターの新しい技術の検証は時間がかかる。技術導入し、検証して、その反省を踏まえて再構築するのは数年後になってしまう。しかし、複数のアプローチをお互いに見ながら、どれが良かったかを取捨していければ技術の成熟は格段に早くなる。この取り組みは、大きい事業者単独ではできないこともある。このような動きは、今はまだできていない。全てを秘匿するのではなく、オープンにする事、クローズにする事の判断スキルが日本人は不足している。話をしやすい緩いコネクションを持つことが大事。

 

情報を集めよう

– 今の若手が「不足していること」があれば教えてください。

今のデータセンター業界で良くしゃべる人はたいていがおじさん。もっと若い人でしゃべる人が増えてもいいと思う。まだまだ、存在感がない。提言、リクエストを発信してほしい。

 

– 最後に若手に対して「期待していること」を教えてください。

上の人は考え方が凝り固まってしまって柔軟な発想ができない。これは宿命。若い方にしか思いつかないアイデアが出てくるはず。これを大切にしたい。そのためにも感受性を高めて、もっといろいろな情報を拾って、データセンター業界の人ともっとしゃべって(議論して)いってほしい。Future Centerの活動を通して実感していると思うが、データセンター業界は横のつながりが大切。

 

◆    インタビュアー、テキスト
株式会社NTTファシリティーズ 狭間 俊朗
◆     インタビュアー
さくらインターネット株式会社 高峯 誠

NTTファシリティーズ 川口様に聞いてみた ブログリレー#7

Profile

川口 晋(かわぐち すすむ)

株式会社NTTファシリティーズ データセンタービジネス本部 本部長

日本データセンター協会(JDCC) 理事

日本データセンター業界のキーマンの方々に「若手への思い」を語っていただくブログリレーです。
7回目は株式会社NTTファシリティーズ 川口様に伺いました。

 

データセンターと関わり始めたきっかけは中国でのコンサルティング事業

– DC業界のキーマンの方々にインタビューさせていただいております。最初に川口様ご自身が建築の道に進まれたきっかけを教えてください。

大学受験の時には、理系ということ以外特に進路を決めていなかった。それで大学ごとに異なる学科を選んで受験した。早稲田大学の建築学科にはデッサンの試験があって、それなりに絵が描けるつもりでいたので早稲田は建築を受けてみることにした。それが建築に進んだきっかけ。

 

早稲田大学建築学科卒業後、NTTを就職先に選ばれた動機を教えてください。

学生時代は物理や力学が好きで、建築学科の中で専門を選ぶ際に構造を専攻した。大学4年生の頃にチェルノブイリ原発事故が起きたのだが、私の卒業論文のテーマが「原子炉と地盤の相互解析」だったため、原子力発電の問題に人一倍関心を持つようになった。同じ研究室の同期らとこの問題について議論を交わすうち、将来に禍根を残す原子力発電には反対する思いを固めた。そのため、就職先には原発を扱わない会社を選ぼうと考え、通信会社であるNTTに就職した。日本の情報通信インフラを支える会社で、自分の専門の構造が活かせると思ったことも動機だった。

 

ちょうどバブル崩壊時期に入社されたのですが、心境の変化はあったのでしょうか。

学生目線としては、バブルというのは直接感じてはいなかった。入社してしばらくは仕事を覚えることの方が忙しく、バブルを意識することもなかった。そのうち、報道や経済評論でバブル崩壊が語られるようになり、客観的に「ああ弾けたんだな」、という程度の印象しかなかった。

 

–NTTで、データセンターに関わり始めたきっかけを教えてください。

1990年に入社して12年間NTTで構造設計していたが、当時は社外の委員会活動も積極的にやっていた。建築鉄骨溶接技能者のAW検定協議会の検定委員を務め、また、日本免震構造協会では免震技術を広めるために資格試験を作り、その指導講師などもしていた。その頃の自分は、構造設計の道を行くものだとばかり思っていた。ところが、2002年に会社が北京に駐在員事務所を開設することになり、ある日突然私が所長として赴任するよう命ぜられた。青天の霹靂だった。赴任後、中国で何がビジネスになるかをさまざま検討していた時に、中国の銀行から電算センターを作るためのコンサルティングの要請があり、これを受けたのが始まりだった。当時の中国はまだデータセンターに関する知見が乏しかったので、日本で実績を積んでいる当社の設計ノウハウが求められた。また、NTTコミュニケーションズが中国の通信キャリアと合併会社を持っていたので、NTTファシリティーズが設備の、NTTコミュニケーションズが運用のコンサルティングをそれぞれ担当する形で両社が連携して、中国の通信キャリアのデータセンター構築コンサルを実施するようになった。結局、2008年までの6年間北京に駐在したが、中国企業からの引き合いが最も多かったのがデータセンター関連の仕事だった。

 

– 1990年から2002年まではデータセンターと関わりは無かったのでしょうか。

その間、NTTグループの中ではドコモが分社化し、その通信用ノードビルの建設が目白押しだったので、こうした案件の構造設計には多く関わっていたが、いわゆるデータセンターを設計したことはなかった。

 

データセンターと関わる前と後のギャップはございましたか。

特になかった。入社以来、通信ビルに関わってきたおかげで、ギャップは感じなかった。情報通信インフラとしてのデータセンターに携わることは、入社動機にも合致しており、何の違和感もなかった。

 

中国は貪欲に知識を吸収して、スピードがすごく早い

中国と日本との働き方の違いを教えてください。

多くある。まず、島国と大陸の文化が根本的に異なっている。日本のように国土の狭い島国では、隣の人と肘がぶつからないように気を配り合う「和」の文化が育まれる。一方、中国のように広大な土地を生き抜かなければならない大陸では、周りよりも自分を第一に考えるようになる。だからこそ中国では、自分に直接つながる血縁や身内にを大切にする意識が強い。ビジネス上の関係でも、本当に信じられる人を見極めてから、共に仕事をするというような面がある。また、中国企業では、経営者も含めて日本企業より若い世代がリーダーを務めていることが多く、意思決定のスピードがとにかく早い。

 

データセンターでも言えることでしょうか。

まさに言える。当時彼らには知見やノウハウがなかったが、海外の企業からそれらを日々貪欲に吸収し、今では日本を追い抜いたような案件を実現している。ITの普及で言えば、田舎の八百屋でもキャベツ1個を買うためにスマホで電子決済するようになっている。そういった面では日本ではまだ普及率が低い。人口が日本の10倍以上いる国で、さまざまな分野でIT化が急速に進められているので、日本が追い抜かれるのは当たり前だったと今では思う。またICT機器などの標準化スピードも早く、データセンターも日本の数倍以上の数を建てている。そして、いち早くアグレッシブにサービスを作る。日本より強いマインドを感じさせる若手に接する機会が数多くあった。

 

– TVや記事などのメディアを見ると、中国は国そのものが情報操作しているイメージはあります。ナショナルセキュリティ的にも当時国からの圧力とかはあったのでしょうか。

当社が行なっていた事業は、あくまでデータセンターのファシリティに関する構築コンサルティングだったので、彼らからしたらむしろウェルカムだった。ノウハウを吸収したいフェーズだったので、そういったことは全く無かった。彼らとして、当時の目的を達成したからこその現在があるのだと思う。

 

日本のデータセンターは「コモディティ化」と「サービスの多様化」へ

中国以外にも目を向けてみたいと思います。AmazonGoogleなどのメガクラウドを含めて、日本データセンター業界はどのように変化するのでしょうか。

矛盾して聞こえるかもしれないが、2つの視点がある。1つの流れは「コモディティ化」や「オープン化」。データセンターそのものが特別なものでなくなり、誰でも同じ品質のものを構築・運用できるようになること。かつて日本電信電話公社の民営化と同時に、通信の自由化が実施され、それ以降通信キャリア各社でさまざまな通信サービスが作られてきた。繋ぐだけの事業領域だったものに、各キャリアがサービスとして付加価値を付けてきた。現在、データセンターも当たり前の社会インフラとなり、グローバルに見れば「コモディティ化」と「オープン化」が進んでいる。そのような状況だからこそ、2つ目の観点が必要になる。それが、サービスの多様化だ。デジタルトランスフォーメンションが進展する社会で、そのサービスの需要に合わせてデータセンターは差別化していける。実際にサービスを社会に提供するのはデータセンターのユーザーなので、データセンターはユーザーごとに最適な環境を提供することで付加価値を出すことが重要になってくる。

 

– 設備に関しては、メーカーの対応はまだブラックボックスの部分が残ります。海外のOCPなどのオープン化の流れに対して、日本のメーカーは海外に追いつけなくなるのではないでしょうか。

データセンター事業者は、自社のサービスのために設備を選び構築している。メーカーも、サービスの変化やユーザーの要求に応えずに、既得権を守っているばかりでは、競争力を失うだろう。ファシリティ領域はITに比べて、まだまだ変化が少ない。空調はラック当たりの発熱量に合わせた変化を迫られてきたが、電源については容量が増えるにつれてフットプリントも増やすような対応に留まっており、こうした点に着目した商品開発も競争力向上につながるだろう。

 

トレンドとして、今後は水冷空調が主流になるのでしょうか?

データセンターが提供するサービスで、空調方式は選ばれるようになる。サービスが必要とするサーバ機器の発熱密度がラック4〜6kVAの電力容量であれば、今までのパッケージエアコンも合理的な選択肢だし、実際にそれで間に合う用途はなくならないだろう。一方、今後はGPUサーバなどこれまで以上に大きな演算能力を必要とするサービスが増えていくことも確かで、水冷空調だけでは間に合わないラック30kVA程度の発熱に対して、液冷やリアドアといった冷却方式を採用する必要も出てくる。

 

では今後サーバからの発熱量の増加によって、液冷は普及されると考えて良いでしょうか。

液冷が特別な技術でなくなる方向には進むと思う。ただ、それが面的に普及するかといえば、一概に言えない。繰り返しになるが、冷却方式はデータセンターが提供するサービスで決まるので、その動向次第ということになると思う。

 

日本でも今後データセンターの建築ラッシュが始まるのでしょうか。

デジタルトランスフォーメーション時代を支える社会インフラとして、その需要はますます高まっているが、受電容量も含めた建設用地が潤沢にはないのが現状。一方で、データセンターは投資対象として儲かる、と考え始めている投資家が増えている。データセンターは土地に対しての投資額が大きい分、採算性も高い。投資家や不動産関係者がデータセンターのことを勉強し始めているので、その方面からの動きも今後出てくるだろう。

 

自信となる「強み」を持つこと

データセンターの人材面について質問させてください。データセンターの現場には、ご年配の方と若手と両極端な世代に分かれることがあります。バックボーンが違う人たちをマネジメントする際に意識していることはございますか。

強く意識することはない。そもそも組織にはミッション・使命がある。それをマネージメント層が共有し、みんながそのミッション・使命に対して、何ができるのかを一緒に考える場を作る。こうしなきゃいけないということを統一するのではなく、何のためにやるかを共有してみんなが同じ方向を向くようになることが大事。

 

データセンター業界は若手が少なく、保守的な考え方を持つ人が多いように思っています。

若手の皆さんは自分の「強み」、自信となるものを早い段階で持つべきだ。とにかく何でもいいので、これなら負けないぞ!というものを一つ持つこと。その「強み」は会社の業務だけではなく、データセンター業界でも発揮できるように引き上げていく。終身雇用が当たり前の社会ではなくなっていくので、皆さんがステップアップしていくためにも、何を自分の「強み」にするのか考えてほしい。

 

「強み」は若手への足りないことでもあるのでしょうか。

若手だから足りない、ということではない。年配の人に接しても、経験を「強み」として蓄えてきている人と、そうでもない人との差を感じるはずだ。若手のみなさんにも「強み」を身につける意識を持ってほしい。

 

それは業界の若手のみなさんへの期待していることでもあるのでしょうか。

その通り。混沌としたこの世界でみなさん自身がハッピーになるために、活き活きと働いてほしいと考えている。業界で働く若手のみなさんがハッピーでないと、業界が暗くなってしまう。

 

自発的に活動して、ハッピーを掴み取ろう

川口さん自身が幸せになるために心がけていることはございますか。

大きな意味で、情報通信社会のインフラを支えるというNTT入社当時からのイメージ通りの仕事をやれている。目の前にあることにしっかり取り組んで結果を出すということの積み重ねがやりがいであるし、それがハッピーだと思う。

 

川口さん自身が若手の時はいかがでしたか。

入社3年目、子会社のシステム技術部に出向して、当時大型電算機センターで動いていた構造解析プログラムをワークステーションに移植して併せてGUIを一から作るという仕事を任されることになった。それを要件定義からシステム設計、コーディング、マニュアル作成に至るまで、外部に委託することなく全て自分でやり遂げて納品したことが大きな自信につながった。その自信が、それ以降に担当した別の難しい仕事や前例のない仕事に取り組む際の原動力になったのは間違いがないと思う。

 

最後にデータセンター業界に働く若手へのメッセージをください。

自由にやりたいようにやればいい。フューチャーセンターのような活動に参加し、自分ができること、やれることの幅を広げたほうが絶対に楽しくなる。そして貪欲に吸収して「強み」を見つけていくことで、視野も広くなって更に次のステージで活躍できるようになっていく。これはデータセンター業界だけではなく、どこでも言えること。今も昔も世の中は常に変化している。アンテナを高くして自発的にいろいろ動いた先にチャンスは待ってくれているものだと思う。

・テキスト
さくらインターネット株式会社 高峯 誠
・インタビュアー
三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社 相澤 祐太、株式会社NTTファシリティーズ 狭間 俊朗

NTTコムウェア 尾西様に聞いてみた ブログリレー#6

Profile

尾西 弘之(おにし ひろゆき)

NTTコムウェア株式会社 ネットワーククラウド事業本部 SmartCloud推進部門 部門長

日本データセンター協会(JDCC) サーバ室技術ガイドブック ワーキンググループ リーダー

日本データセンター業界のキーマンの方々に「若手への思い」を語っていただくブログリレーです。
6回目はNTTコムウェア株式会社 尾西様に伺いました。

 

データセンター技術、市場は変化している

早速ですが、日本のデータセンター業界の変化はどのようにお考えでしょうか。

業界の成長とともにデータセンターの規模は大きくなってきましたが、5年前ごろから大きくならなくなりました。当時からモジュール化が流行り、小規模の投資に変わってきたと思います。しかしながら、今後はハイパースケールのデータセンターが出てきたときに、国内でも非常に大きな規模のデータセンターが増える傾向にあると思います。次に、電力密度の観点として一般用とハイスペックのデータセンターが2つに分かれてきています。一般的には4kVA 〜6kVAで充分ですが、10kVAを超過した需要が出てきました。また、ラック1台の耐荷重も1.2 〜1.3トンが限界だと考えられていましたが、液冷対応の配管設備も必要となってきており、耐荷重1.5トン程度が現れてきて、業界とともに技術も変化は起きています。

 

データセンター市場の変化はいかがでしょうか。

国内市場は間違いなく伸びており、今までの都市型と郊外型の考えや用途が変わってきていると思います。ラック単位で売ってきましたが、占有面積や電力従量課金による販売が大規模都市を中心に行われてくるかもしれません。そして、これからは地方でもエッジコンピューティングで処理する傾向が出てくると予想しています。

 

国内と外資系データセンターとの事情を教えていただけますでしょうか。

外資系のデータセンターが参入しており、その流れに逆らえないと考えています。では日本の事業者はどうするのか。まずクラウドファーストからクラウドノーマルの時代になってきたため、ハウジング需要は落ちてきて、外資系データセンター事業者などのホールセラーが伸びており、元々大規模に運営している事業者は問題ないかもしれませんが、それ以外のデータセンターは生き残れるか懸念しています。そのため営業のやり方、サービス提供のやり方を見直す時期に来ていると思います。また、AmazonやGoogle、Microsoftなどのクラウド事業者との接続も重要となるでしょう。

 

–  そのまま海外に飲み込まれるかもしれない日本はどのように立ち向かい、ビジネス展開すればよろしいでしょうか。

ハウジングの需要が減っていくのであれば、ハウジング以外で戦うことも一つの選択と考えています。クラウドの下にエッジコンピューティングやフォグコンピューティングがあり、IoTはフォグで集めて、エッジでローカル処理を行えます。これまでのデータセンターの用途とは異なってくるでしょう。SoRとSoEとの関係でも、情報系システムは間接費ベースの用途(ERPシステムなど)や企業内生産を行うための管理機能でした。情報系システムが持つ情報データが価値を生む、というビジネスに今後変わっていった時にエッジコンピューティングの傾向とどうマッピングするかが重要と思います。

 

日本のオープン化は遅れている

別の視点でご質問させてください。尾西様がご参加されているOCPではオープン化の流れが加速しています。ただし、ファシリティ設備はベンダーロックインが残る現状はどうお考えでしょうか。

ベンダーロックインとしてはデータセンター建設時に、設計企業などが扱いやすい業者を選んでいる傾向があるかもしれません。外資系の事業者は標準化された物を選んで、地域エリアごとに微調整しながら導入しているため、国内のファシリティメーカーは相当苦労するのではないでしょうか。お客様が安心するためにファシリティの見える化、最適化も必要と思います。現状ファシリティはクローズドネットワーク前提でのシステムのため、オープン化しづらい状況がありますが、海外は最初からオープン設計している違いがあると考えています。

 

他に日本が遅れているものはありますか?

アセットマネージメント、OCPが取り組んでいるIT機器のオープン化も遅れていると思います。

 

例えばGoogleはサーバからファシリティまで自分たちで設計・保守していると聞いています。日本の事業者とはスピード感は違うと感じています。

IT機器の装置だけではなく、中のチップまでも自社独自で設計しています。グローバルで数十箇所以上のスケールを持つ事業者では成り立つのですが、国内事業者の規模では経営が持たないかもしれません。GoogleなどもメンバーであるOCPではその独自技術が誰でも手に入ることが一つの目標です。

 

実際アメリカでのOCP浸透率は違いますか。

実は、OCP自体はアメリカ内でもそこまで広がっていないようです。クラウドやゲームのコンテンツ等で大量のサーバを使う人たちには広まっています。技術自体がどんどん派生や進化しているのですが、日本についてはリードオンリー、勉強しているだけの会社が多いようにも思えます。

 

日本企業のサーバメーカーは追随できていないのでしょうか?

日本においては自社設計されなくなり、技術の動向を捕まえられておらず、コントロールがしづらいようです。そのためOCPの戦場には入れていません。彼らも技術オープン化の必要性は理解していますが、企業内でファシリティ部門なのかIT部門なのか、どちらが責任を負うのか、またその間に垣根があります。そして今はオープン化ができていないことと、そして人海戦術でやっているからコストが非常にかかっているように見えます。

 

プロセスの一つを端折ってみよう

日本の事業者に必要な視点はございますでしょうか。

『さくらインターネット田中社長』の【余白】を作ることが大事というメッセージです。私も運用者、技術者にはとても必要なことだと感じています。あと【端折ること】も必要だと思っています。業務には色々なプロセスがありますが、一つ抜いてみること。端折ってみたことによって本当に必要だったものも分かると思います。

 

新しい技術を見せていくこと、形にしていくこと

ありがとうございます。続いては尾西様のことを伺わせてください。データセンターに関わるきっかけを教えてください。

電電公社に入社し、電気通信ネットワーク関連の運用、開発などをやっていました。入社当時、電話局で通信機械・電力を担当し、電力設備、空調などを運用しており、データセンター関連では大変役に立っていると思います。NTTコムウェアが20年前に設立され、当初はNTTグループ向けにシステムの開発、導入、保守をしていたのですが、その後に対象範囲をNTTグループ以外の他企業向けにも拡げました。そして、それまでの通信機械室でのシステム運用の延長で、データセンターのビジネスも関わり始めたことがきっかけです。

 

いまの若手はデータセンターを知らない状態で入社しています。技術情報をオープンで交換できるコミュニティが欲しい、そして若手のメンバーがもっと欲しい、という声が多いです。尾西様自身の若手時代はどういった思いで働いていたのでしょうか。

私自身が機械室で働いていた時期もあり、保守運用の責任者を担当したことから、如何にお客様のシステムを守るのかについては強い思いがあります。このためにはベストプラクティスを共有することは重要です。ただ、運用業務として技能的なこと、例えば目視点検ばかりやらせるだけだと腐ってしまいます。彼らも技術者としてのプライドがあるはずなので、新しい技術動向を見せながら、いろいろな業務に携わってきてもらうようにしてきました。

 

新しい技術を見せる手法・やり方をご教示いただけますでしょうか。

最初にNTTコムウェア社内で他社事例を習得するために、国内外のデータセンター見学を行いました。その後NTTグループ会社に拡げ、さらにグループに関係なく他社含めてサバイバルツアーを開催したことにより、新しいデータセンターの技術、運用情報を勉強しています。自分に任された任務だけではなく、他社と会話することで情報交換の活発化が私の根本にあります。サーバ室技術ガイドブックのワーキンググループもそこが目的です。各社が悩みを抱えている決まりがないものをまずは目に見えて分かる形にする。データセンター運用者の視点だけではなく、上からの視点、下からの視点も見ることが重要だと思います。自分の立場だけではなく、関係するステークホルダーも視点も捉えながら、勉強して行くことをお勧めします。

 

若手たちは情報を出してはいけない、と思っているようです。データセンター自体がセキュアな場所であるため、語ること自体もブレーキしているように見えます。

案外吐き出して見ると、みんな同じ悩みを抱えていることが分かります。データセンターの技術において秘密なことは案外少ないと思っています。それらの情報を皆さんが吐き出すことでオープンコミュニティがレベルアップし、自分に戻ってきます。ただしお客様情報などの一定の制限はかけておく約束事しておきながら、喋れることは喋っていいはずだと思います。

 

「地道な努力」と「大胆な発想」

若手へのメッセージをいただきたいです。尾西様から見て若手への足りないことを教えてください。

足りないのは「チャレンジ」、「挑戦」です。与えられた仕事をこなすことはみなさん精一杯、誠実にやっています。ただし改善すること、新しいことをできないことが気になっています。私からデータセンター運用者向けに伝えていることは「地道な努力」と「大胆な発想」(エボリューション&レボリューション)です。お客様のシステムを守る上で地道にやっていくことは必要であり、大胆な発想を持ってコストを安くする、エンジニアを楽にして次のステージに目指すことが大事と思います。「地道な」ことはみなさんやられていますが、「大胆な」ことは難しいようです。手順にあることだけ従っていれば「大胆な」ことは出来なくなるでしょう。そして人の言われたことだけをやっているのはつまらないはずです。例えば、「セレンディピディ」を意識してみてください。苦労をすること、経験することで結果につながります。若手の時は着実にやっていると、いつの間にか力になるはずです。データセンターで運用管理で楽になること(端折ること)も段々に分かってくると思います。将来チームリーダーやマネージャ、スーパーバイザーになった時にコストや人のマネジメントをどうするかも見えてきます。

 

最後に、若手に対して期待していることをお話しいただけますでしょうか。

外資系の参入などで厳しい状況になってくるので、若い人の柔軟な発想が出てくることを期待しています。過去の経験だけしゃべる人間ではなく、フリーな立場でいろんなことを喋って欲しいです。私はそういうことを期待しています。自分の成長と会社、そして社会が良くならないと自分の生活も成り立たないからです。若手の皆さんから、今までと違うことを指摘できるようになると、より良い業界になってくると信じています。

・インタビュアー、テキスト
さくらインターネット株式会社 高峯 誠
・インタビュアー
三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社 相澤 祐太

市川技術士事務所 市川様に聞いてみた ブログリレー#5

Profile

市川 孝誠(いちかわ こうせい)

株式会社市川技術士事務所

日本データセンター協会(JDCC) ファシリティ・スタンダード ワーキンググループ リーダー

 

日本データセンター業界のキーマンの方々に「若手への思い」を語っていただくブログリレーです。

5回目は株式会社市川技術士事務所 市川様に伺いました。

 

◆ 世界と競える力を

–  最初に、日本のデータセンター業界はどのように変化していくか、市川様のお考えを聞かせてください。

データセンター市場は国内企業だけで閉じられるものではなくなっている。外資系企業の進出が加速しており、国内企業同士で競争している場合ではなく、国内のデータセンター事業者が手を取り合って、海外クラウド事業社と対抗していくことが大切。

 

– 海外と競争するためには何が必要になってくるでしょうか。

日本に進出している外資系のメガクラウドベンダーは規模が大きく、開発投資金額も桁違いに大きいことから日本のデータセンター事業者が、個々に対応できることは限られている。また、国内データセンター事業者は同じ課題を抱えていることも多々あるので、JDCCを活用して業界全体で対応することも必要と思われる。

 

– データセンター業界のオープン化については若手同士のディスカッションでも議論に挙がりました。若手だけでなくデータセンター業界全体としてのオープン化は課題の1つとして認識されているということでしょうか。

日本のデータセンター業界では情報を外に出さない傾向が強く、若手が業界内で会話をする機会が少ないように思われる。一方欧米では業界内を渡り歩く人も多く、事業者同士が情報交換を行いやすい傾向がある。昨年JDCCとして、サーバラック収納に適した短い長さのサーバ用電源ケーブルの採用をサーバメーカーに依頼し実現した例もある。個々の会社では折衝できないことも業界団体として要望すれば実現できることも多いため、このような取り組みをもっと進めていくことが必要と思う。

 

◆ 設備・運用の考え方は適切か?

– データセンター業界全体のお話を最初に伺いましたが、ファシリティ・スタンダード ワーキンググループのリーダーを務める市川様には今のデータセンターファシリティはどのように見えるでしょうか。

日本のデータセンターファシリティは海外と比較しても全く遜色のないレベルと思う。ただ、日本と海外ではSLAの考え方や捉え方の違いがある。海外ではデータセンターの利用者も、SLAに規定されたダウンタイムは問題なく許容するのに対し、日本ではSLAを結ばず、ティアレベルに関係なくダウンタイムを許容しない利用者が多く、ダウンタイムが認められないことからデータセンターの運用に過度の負担が強いられている。

 

– メンテナンスにどのような違いがあるのでしょうか。

海外のデータセンター事業者は同じファシリティ仕様のデータセンターを作ることにより、運用やメンテナンスを標準化・統一化している例が多い。日本では新しく作るセンターには最新の技術を導入する傾向が強く、結果として各センターごとに異なる運用やメンテナンスが必要になってしまっている。どのセンターに行っても同じ仕様とすることにより、トラブル対応事例や改善事例が共有化され・人材の教育・育成も標準化・短期間化可能となるものと思われる。

 

◆ 人との付き合いはいつでも大事

– 大変おこがましいのですが、市川様がデータセンターと関わるようになった契機を教えてください。

鹿島建設株式会社に入社後、スタジオなどの設計をやっていたが2000年にデータセンターの案件に携わったのが契機。オフィスの電力使用量が100~150 VA/㎡の時代にデータセンターは1~1.5/㎡(2 kVA/ラック)が要求され、このような施設が本当にあるのか信じられなかった。

 

– データセンターがまだまだ少なかった時期だと思いますが、どのような苦労がありましたか。

そのころは外資系データセンターの建設ラッシュであり、毎週のように新しい案件が舞い込んでくる一方、従来の電算センターとデータセンターとでは基準が異なり、施主の要求も良く理解できなかった。このため、IEEE(アメリカ合衆国に本部を持つ電気工学・電子工学技術の学会)の原文を取り寄せ、バイブルとして読み漁った。また、英語での意思疎通もうまくできないことから、施主が何を期待してるか「忖度」するようになり、「設計図を書いて、建てて終わり」という考えから「人と人の付き合い」というように変わっていった。

 

◆ あなたたちが変える

– 最後に若手に対して「期待していること」を教えてください。

これからのデータセンター業界を変えていくのはあなたたち若手です。そのためには、他の会社の人と積極的に話しをすることが大事で、仕事だけではなく、無駄話をすることで本音を言えるようになる。その面ではフューチャーセンターは貴重な活動だと思うので、若手が主体となりもっと業界を盛り上げて欲しい。

 

・インタビュアー、テキスト

株式会社NTTファシリティーズ 狭間 俊朗

・インタビュアー

さくらインターネット株式会社 高峯 誠

三菱総研DCS 増永様に聞いてみた ブログリレー#4

Profile

増永 直大(ますなが なおひろ)
三菱総研DCS株式会社
日本データセンター協会(JDCC) 事務局長

日本データセンター業界のキーマンの方々に「若手への思い」を語っていただくブログリレーです。

4回目は三菱総研DCS株式会社 増永様に伺いました。

 

◆ 古い考え方を見直す必要がある

– 日本のデータセンター業界はどのように変化していくか、増永様のお考えを聞かせてください。

正直なところ、今後どのように変化していくか想像できないが、日本国内では新しいビジネススキームが必要になる可能性が高い。

 

– と言いますと、現状のビジネススキームのどの辺りが問題になってくるでしょうか。

国内企業はレガシーシステムに囚われてしまっているデータセンター事業者が多いと感じている。また、レガシーシステムで儲けようとしている企業が多いため、考え方が古い。データセンターはあくまでもインフラであり、そこから生まれるサービスが重要。日本のデータセンター事業者は「どのようなサービスを生み出せるか」に注力すべき。データセンターそのものが重要であるという概念に囚われている人が日本には多い。

 

– このような既成概念のビジネスが続いている理由をどうお考えでしょうか。

1990年代のバブル崩壊直後に新卒入社した人達が、今の企業の部長や課長等の役職を担っている。バブル崩壊後は景気悪化によるコスト削減を第一優先として働いてきた人が多く、いい意味でも悪い意味でも費用対効果ばかり気にする傾向があり、新しいことに挑戦する人が少なかった。その結果チャレンジ精神の風土が育たなくなった。これは、今の若手にも同じことが言えると思う。

 

◆ ゲームチェンジが起こっている

– 一方、海外に目を向けると同じようなことは起こってないのでしょうか。

AmazonやGoogleに代表されるようなハイパークラウドと呼ばれる企業たちがレガシーシステムを壊し、破壊的イノベーターとなりゲームチェンジを起こしている。この流れに唯一追従しているのは、IT後発組のレガシーシステムがそもそもなく、制約やしがらみがない国。中国が代表的な例である。

 

– このようなゲームチェンジを可能としている要因はなにでしょうか。

ハイパークラウドのような企業は、自社製品で統一したり、自分たちのやりやすいようにファシリティ構築を行っているため、管理が容易。他社の倍くらいのスピード感でビジネスを行い、世界を席巻している。

 

◆ 5〜10年後を見据えたサービスを提案

– 大変おこがましいのですが、増永様が若手時代の話を伺わせてください。いまのデータセンターあるいはインターネットと関わるようになった契機を教えてください。

野村総合研究所に在籍していた時に、証券会社のオンラインシステムの運用を担当していた。その際に、紙の手順書をワークステーションに落とし込んで業務の自動化、ジョブの監視システム構築等、運用効率の改善に取り組んだ時にデータセンターを利用する側として関わるようになった。その後にデータセンター設立に参画するようになった。

 

– ユーザー側から構築側へと業務が変わりましたが、データセンター設立に参画した際にはどのような思いがありましたか。

チャレンジを歓迎される風土があり、6kVAラック専用のサーバ室構築、200Vのみを扱うサーバ室の構築等、様々な取り組みに挑戦した。ハウジング全盛期という後押しもあり、データセンターのオープン前に完売するほど人気があった。

 

– 設立当初から成功を収めたデータセンターですが、運用段階に入ってからはどのようなことを意識されていましたか。

現場は現場のことしか語らず、お客様は目の前の困ったことしか話さないため、本当に必要なもの、5〜10年後を見据えたサービス提案ができるように心がけていた。お客様のニーズを汲み取るだけでは、いずれ陳腐化してしまうという意識があった。

 

◆ ぶっ壊して作る側になれ

– 最後に若手に対して「期待していること」を教えてください。

デジタルネイティブ世代の価値観だからこそ、発想できる新しい取り組みにチャレンジしてほしい。ただし、チャレンジするには覚悟も持って取り組んでほしい。若い世代が考える10年後のデータセンターがどんなものなのか、期待している。

 

・インタビュアー、テキスト

株式会社NTTファシリティーズ 狭間 俊朗

・インタビュアー

さくらインターネット株式会社 高峯 誠、三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社 相澤 祐太

産業技術総合研究所 杉田様に聞いてみた ブログリレー#3

Profile

杉田 正 (すぎた ただし)
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
情報技術研究部門 テクニカルスタッフ

日本データセンター業界のキーマンの方々に「若手への思い」を語っていただくブログリレーです。

第3回目は産業技術総合研究所 杉田様に伺いました。

 

◆ データセンター建設ラッシュの始まり

– 今後の日本のデータセンター業界はどのように変化していくと考えますか。

データセンターは今後も増えていくと考えるが、今の数では圧倒的に足りない。日本にはもっともっとデータセンターが必要だ。

 

– 増えていくという言葉を聞いて、業界で働く身としては期待を持てるのですが、足りないとは一体どのような状況でしょうか。

数字で考えると分かりやすい。日本はサーバが年間300万台稼働していると言われているが、半分以上はデータセンターに入っていない。さくらインターネットの石狩データセンターの規模でさえ最大3万台収容、残りの数百万台のサーバの受け皿となるデータセンターはあるのか?日本にはまだまだデータセンターが足りないよ、圧倒的に足りない。

 

– 足りない状況の中で、データセンター建設を後押しするには大手ゼネコンの力が不可欠かと思います。

今までは東京オリンピック関連の建設が多く、ゼネコンはデータセンター建設から手を引いていた。今はだいぶ落ち着いてきているという情報を入手しており、今後はデータセンターの建設ラッシュが加速するだろうと見込んでいる。

 

– 日本でこの勢いということは、海外のデータセンター業界の勢いも止まらないとみていいですか。

その通り。そして日本とは次元が違う。特に中国の勢いが凄まじい。アメリカのデータセンター数4,000センターに対し、中国は9,000センター稼働している。日本は600センター程度だから海外と比べたらまだまだ。さっき話した足りない理由が分かるでしょう。

 

– ものすごい差が生まれていますね。数でも違いがありますが、海外のデータセンターと日本のデータセンター技術者に違いはありますか。

基本的にオープン。特にOCPを推進する Facebookのデータセンター技術者は聞けばなんでもノウハウを教えてくれる。逆に日本はどうだろうか。皆情報を隠すことばかりに専念している。全ての情報を開示しろとは言わないが、データセンター業界全体のスキルアップを目指すのであれば、許容できる範囲でオープンになんでも議論すべき。

 

◆ 新しいもの好き!好奇心の赴くままに

– ここからは杉田様の若手時代のお話をお伺いします。今ではデータセンターに関わる多種多様なプロジェクトでご活躍されていますが、新卒から若手の時はどのような仕事に従事していましたか。

新卒では電装システム系の設計・工事を担う会社に入社した。そこからはクボタ→コアマイクロシステムズ→ファーストサーバ等いろんな企業を転々として、今は産業技術総合研究所のテクニカルスタッフとして「省エネDC1本」で仕事している。若い頃の話じゃないけど、PUE=1.1以下の省電力を実現している倉敷や新宿のデータセンターは私がデザインしたよ。

 

– 1つの括りにとらわれず、様々な業種に従事していらっしゃいますね。

特に小学生の頃からラジオとか作るぐらい電気が好きで、電気と同じくらいコンピュータも好きだった。そのバックボーンがあるから色々な企業で仕事させてもらっているというのもある。特に新しいものが好きだから、自分で最新技術とか調べてひたすら徹底的に勉強していた。

 

– 最新技術という意味で、今後データセンター界隈で出て来る技術とかありますか。

電気代単価を7円くらいまで抑えることのできるペトロスロイカ(太陽光発電)やリチウムイオン電池の技術が今後5年以内に広く普及するだろう。電気代がネックになっているデータセンターにとってはまぎれもないチャンスだ。

 

◆ 英語を勉強しなさい、そして知見を広げよう

– 若手に対して足りないと感じることを教えてください。

「英語を勉強すること」これに尽きる。ITにしてもデータセンターにしても最新技術は全て英語で発信されている。そして、海外にいけ!先ほどもFacebookのデータセンター技術者の話に触れたが、海外はやる気があればなんでも教えてくれる。実際に、とある企業で海外企業に若手を武者修行へ出したところ、そのギャップでそのまま海外企業に転職してしまった事例があるくらいだ。

 

 – 逆に若手に期待していることを教えてください。

知見を広げて、世の中をたくさん見るべき。その時に重要なのは自分の立ち位置を考えて行動すること。若手であればその立ち位置であれば、いわゆるデータセンター業界でキーマンと呼ばれる人たちなら喜んでその知見を教えてくれると思う。何でも興味を持って、今後のデータセンター業界を盛り上げて。期待している。

・インタビュアー、テキスト

三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社 相澤 祐太

・インタビュアー

さくらインターネット株式会社 高峯 誠、株式会社NTTファシリティーズ 狭間 俊朗

東京大学大学院教授 江崎先生に聞いてみた ブログリレー#2

Profile

江崎 浩(えさき ひろし)
東京大学大学院 情報理工学系研究科 教授
日本データセンター協会(JDCC) 理事・運営委員長
その他、WIDEプロジェクト代表。 東大グリーンICTプロジェクト代表、Live E! プロジェクト代表、MPLS-JAPAN代表、IPv6普及・高度化推進協議会専務理事、IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース代表、JPNIC副理事長、IPv6 Forum Fellow、ISOC理事

日本データセンター業界のキーマンの方々に「若手への思い」を語っていただくブログリレーです。

2回目は東京大学大学院教授 江崎先生に伺いました。

 

◆ 日本の強みは「品質」以外はない

– 日本のデータセンター業界はどのように変化していくか、江崎先生のお考えを聞かせてください。

IT業界全体がどうなるかはわからない。しかしデータセンター業界の成長はまだ進んでいく。もう一度データセンターがブームになるはずだ。

 

– 日本企業が強みとしている「品質や改善」は世界で通用するのでしょうか。海外も日本の品質を勉強しています。私たちは違う強みを身につけ、優位性を見出す必要があるのではないか、と考えています。

現状、日本の優位性はない。スタートアップやイノベーションについては中国とインドが強い。ただし日本で根付く品質とクオリティ、そして期限を守る文化は世界に通用するはずだ。これ以外に日本の強みはない!!

 

– IT業界でのデータセンターの役割はどのようにお考えでしょうか。

データセンターは従来の箱売りだけではなく、運用、ソフトウェア開発を含めてビジネスとして成長していかなければいけない。

 

– 確かにソフトウェア化、IT化の普及は加速しています。デジタルトランスフォーメーションが進んでいくことで、データセンターへの変化は起こるのでしょうか。

デジタルトランスフォーメーションはバズワードになりがちだが、プログラミングやソフトウェア開発の人間が増えることでデータセンター業界は恩恵を受ける。実際TOYOTAや三菱UFJ銀行などがデータセンターを大規模使用、あるいは作ることで、データセンターが増えている。

 

◆「多様化」が加速する

– 最近JDCCは中国のデータセンター協会と関係性を築こうとしていますね。

中国のデータセンター業界は日本以上に右肩上がりだ。年間40%で市場が発展している。それは止まることなく今後もまだ続くだろう。JDCCは彼らと協力し合える関係性を築きたい。

 

– ハイパージャイアント含めて世界情勢の動向はいかがでしょうか。最近では外資系のデータセンター事業者が日本に進出してくる話題をよく耳にします。

日本に来たがっている海外ユーザは非常に多い。昔は電気代が高いことが日本進出のネックとなっていたが、今は海外も高くなってきている。日本のデータセンターがPUEの値が良くなってきていることも注目されている一つだ。

 

– 海外から見て、日本は地震国のイメージが強くないのでしょうか。

そういった環境面の問題はすでに払拭されている。それこそJDCCが東日本大震災や熊本地震の際にデータセンターでは問題が起きなかったことを証明した。環境面の条件よりも政治的な優位性はある。今後は政情の安定さとナショナルセキュリティーが重視されるだろう。先ほども言ったように日本にやってくる海外ユーザは確実に増えていく。必然的に「多様化」は加速する。

 

◆ Windows95の登場でインターネットが伸びると確信

– 大変おこがましいのですが、先生が若手時代の話を伺わせてください。いまのデータセンターあるいはインターネットを知るきっかけを教えてください。

学生時代はインターネットの存在を知らなかった。東芝入社後にアメリカで研究員となるきっかけをもらい、1991年にインターネットを知り、趣味で始めた。1994年コロンビア大学で高速インターネットアーキテクチャの研究、そして国際的標準化に向けて活動を始めた。1998年には東京大学でニュートラルな立場でインターネット業界を発展に貢献していたと思う。40歳まではワガママにやらせてもらっていたと思う。

 

– 素人の意見ではありますが、Windows95の登場でインターネットの一般化が急激に進んだと記憶しています。私自身子供でしたが、恥ずかしながらインターネットの存在は初めて知りました。

PCのブラウザを通してインターネットの商用ビジネス化が加速していたことは確かだ。データセンター業界の今の状況は近いと思う。IoT、AIの成長はもちろん、世の中のセンシングがより増えていくことで巨大なデータセンターを作らなければいけないフェーズに入っている。

 

– 日本の企業について、教えてください。先生の若手時代といまの時代では違いはありますか。

今は安定志向をあまり考えていない。ジョブチェンジを考えることが多い。昔も今も基本は変わらないが、実際転職が増えているように見える。そういう時代だからこそ、今後何が起こるかの情報を集めること、そして多様なスキルが必要になって行くだろう。特に情報を得ている人と得ていない人の格差が激しくもなっている。

 

– 多様なスキルのお話がありました。私自身フューチャーセンターを立ち上げて、データセンター事業者以外の設備メーカやゼネコンと議論しあえるいい場所をつくれたと自負しております。今後は異業種交流なども今度進めていきたいことも考えております。

異業種という言葉は聞こえがいいが、ただ話し合うことだけではダメだ。そういう場所では出来上がっている人、優秀な人が多いから失敗する。「誰と何を話したい」かが大事だ。カドが取れている人が多くなると面白くないだろう?

 

– 確かにおっしゃる通りです。面白いメンバーがいなければ、私自身もフューチャーセンターをやっていませんでした。

 

◆ プログラミング能力を高めよう

– 日本は超高齢化社会になるに連れて、若手人材が少なくなることに危機感があります。

むしろ歓迎してもいい。若手のみんなにはチャンスと捉えてほしい。今まで人海戦術でやっていた作業に対して、コンピュータを使ってその文化をぶっ壊してほしい。それは日本だけではなく、ワールドワイドで動くことになるだろう。

 

- 実現するために若手に対して「足りないこと」を教えてください。

プログラミング能力が足りない。今の大学生は将来プログラムができないと、生き残れないことがわかっている。データセンターでプログラムに触れない若手も勉強するべきだ。

 

◆ 君たちが世界を作る

– 最後に若手に対して「期待していること」を教えてください。

「君たち若手が世界を作ってくれ」。それに尽きる。

・インタビュアー、テキスト

さくらインターネット株式会社 高峯 誠

・インタビュアー

株式会社NTTファシリティーズ 狭間 俊朗、三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社 相澤 祐太

兵庫県立大学教授 白川先生に聞いてみた ブログリレー#1

Profile

白川 功(しらかわ いさお)
兵庫県立大学特任教授, 大阪大学名誉教授
日本データセンター協会(JDCC) 理事長
その他、知的財産高等裁判所 専門員、株式会社ソリトンシステムズ 顧問、株式会社モリタホールディングス 顧問、株式会社アースインフィニィティ 取締役,株式会社地球観測 取締役

 

日本データセンター業界のキーマンの方々に「若手への思い」を語っていただくブログリレーです。

初回は兵庫県立大学特任教授 白川先生に伺いました。

 

世界初の自動改札システムや五層チップ開発、集積回路の設計研究を続けて楽しかった

いきなり不躾かもしれませんが、先生の経歴を教えてください。

1963年大阪大学工学部卒業し、大学院を経て1968年工学博士を取得。その後、すぐに大学助手を務めた。

 

世界初の自動改札システム開発のいきさつも教えてください

修士時代の1964年近鉄の要請で定期券自動改札システムの開発に着手した。大阪万博の直前だ。定期券の通用経路の符号化をパンチカード穴25 bit以下でやれとの依頼を受けた。近鉄はすでに50 bitの符号化を取得していたが、それでは定期券の穴あけは無理であった。そこで、当時の私の先生の指導の下で21 bitの符号化法を開発した。以後の磁気カードの出現により今日の自動改札機普及に繋がった。

 

集積回路の話しを伺ってもよろしいでしょうか。

1970年代後半にNECのアルミ5層チップの設計も手伝った。この世界最初の5層チップ用に新しく多層配線設計手法を開発し、企業のCAD設計に貢献した。以来集積回路向け設計自動化手法の研究に従事することになった。1980年代後半からデジタル設計は急速に発展し、CADツールが生まれ、設計方法論を変革した。米国大学ではMOSIS(集積回路設計支援システム)という設計ツールを使って安価にチップ試作を行えたが、日本の大学ではそれができなかった。そこで1998年、修士学生を博士課程に進学させ一人前のチップ設計者に育て上げる目的で、日本最初の国立大発ベンチャーの株式会社シンセンスを起業した。学生の生活支援だけでなく設計実務を経験させるためだ。以後、信号処理用チップ開発や液晶表示機器のCAD開発にも参入し、学生の奮闘と自立を強要しつつ忙しく楽しい日々を送った。

 

 JDCCが設立された当時、データセンター業界は電気使用量削減の影響が大きく、ネゴシエートに動いた

ありがとうございます。先生の経歴を伺うだけでも勉強になります。他にもたくさんのことを伺いたいのですが、JDCCについて触れさせてください。

2008年に理事長就任依頼の話を伺った時はデータセンターについては全く知識がなかった。当初、最大の課題は会員を募ることであったが、それにも増して、東京都が制定した使用エネルギー総量削減条令には狼狽した。年間1割強の電力増を抱えるデータセンター事業者に対しても一律に、2010年から5年間8%以上、2015年から5年間17%以上の削減義務が課せられた。試算ではセンター当たり10億円以上の罰則になるため、東京都庁に伺い、条令には従うが、データセンター事業には死活問題となるので、削減条件を緩和する方策について2者間協議の場を設けてほしい旨要望した。相互理解に達するまでには3〜4年かかったが、年間6%以上の電力増(=事業拡大)のエビデンスがあればその増分だけ斟酌してもらえることになった。

 

データセンターにサーバーを置くことで、電気使用削減にも繋がることも大きいですよね。

東京都内の6割近くの企業がデータセンターのユーザーであるが、東京以外では4分の3もの企業が自前でサーバーを持っており、データセンターのユーザーではない。よって、このような企業をデータセンターのユーザーに勧誘することもJDCCの重要な課題だ。江崎先生の研究報告によると、自前のサーバーをデータセンターに移行するだけで電力使用量が15%削減でき、そのうえ、データセンター内のサーバーで仮想化を実行するとさらに25%もの削減が図られることも判明している。

 

– JDCCには自治体会員もいらっしゃいますが、今後広がっていくことはないのでしょうか。

東京都に比べると他の地方の自治体の関心はまだまだ低い。データセンターは情報系地場産業の核であり、JDCCは自治体会員と組んで地域産業の振興に貢献しなければならない。最近ではNTTグループの企業もJDCCに参加いただき、会員状況も変化してきた。これを機に、会員の更なる連携と多様化を図ってデータセンター活動の更なる増強に努めたいものである。

 

データセンタービジネスはもっと成長できる

クラウド化の波が強いですが、データセンター業界としてはいかがでしょうか。

統計によると、近年クラウド市場は急速に伸び、それが主因となってデータセンター市場の成長を押し上げている。データセンター事業のビジネスプランをもっと精査することによって更なる成長が期待できる筈だ。一つの有効策として、クラウド事業者と手を結び、データセンターサービスとして新しいクラウドの仕組みを開発・導入し、ユーザーの恩恵を増やすビジネスプランを模索すべきである。一方では、データセンター市場が年率7%も成長しているものの、国内サーバー機器の売上が減少し、海外製品に負けているという苦しい事情もあるので、その対策を練ることも重大な課題だ。

 

ファーウェイを始めとしたサーバーを採用する事業者は多くなると思います。

昨年のファーウェイ社のデータセンター関連技術の視察で驚いたことは、人材も技術も中国は勢いが強いということである。特に、生産工程効率化と安全確保について日本の専門家を招いて勉強中という話を聞き、さらには技術開発の高度化を独自で実践している様を目の当たりにして、中国躍進の一面を垣間見ることができた。30~40年前の昔は日本から米国大学へ研究者が多数派遣され(私が見た限り、カリフォルニア大学では1社で数名)、幾多のユニークな人材が育ったが、現在ではその動きが大きく衰退している。米国ビジネスの主流が設計開発からサービスに移行したためであろう。とにかく、サービスの範疇にあるデータセンター業は新種の「データセンターマン」の育成に注力すべきである。もっと『やんちゃ』な人材の登用が必要と思われる。

 

これからの若手人材に対して、もっと必要なことやスキルはありますでしょうか。一昔前はプログラマーの人材不足が騒がれていました。

今はセキュリティの人材不足も顕著に出ている。現時点でプログラマーは30万人、セキュリティ人材は15万人近い人材不足があり、今後もっと進むとも言われている。特に、データセンター向け人材と言ったとき、大学教授でさえデータセンターを知らないから、データセンター向けの人材育成はあまり期待できない。どうすればデータセンターに優秀な人材を獲得できるかはわれわれが独自で考えなければならない。

 

会社の枠を越えて、ぶち壊すこと

若手に対するメッセージをいただけますでしょうか。

社会活動を通じて会社の枠をぶち壊してほしい。実力と勇気を持って、堂々と言える人材が育ってほしい。怒られてもいいから、自分の思いを伝えることが大事だ。

 

私はデータセンター業界でワクワクする世界を作るためにフューチャーセンターを立ち上げました。先生からいただいた「会社の枠をぶち壊すこと」メッセージを大事にし、私の思いを業界へ拡げていきます。

 

 

・インタビュアー、テキスト

さくらインターネット株式会社 高峯 誠

・インタビュアー

株式会社NTTファシリティーズ 狭間 俊朗、三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社 相澤 祐太